- 『水面下の動き』 蒼き流星 希望への架け橋 ダイジェスト3
- ※これは「流星のロックマン」というゲームの二次創作です。あらかじめご了承ください
■7月19日
覇神のウィザードに敗北したスバルは、黄璃病院と呼ばれる最先端の医療が集まる場所へ移送されていた。病室で目を覚ますスバルとウォーロックに、院長である黄璃雷伽が声をかける。
「容態はどうだね、星河スバル君?」
最初は人懐っこそうな印象を受けたが、徐々にその色は影を潜めていく。そこで彼は悟ってしまった。雷伽の上司は、あの覇神黒影なのだと。もしかして雷伽も刺客なのではないかとさえ疑わしくなっていく。
「200年前に暴走した電脳獣2体が現れるなんて異常だ。それもただ暴れているだけなら分かるがあまつさえ操られている。それを御すだけの力を黒影君は持っているわけか。たしかに彼なら可能だろう。なんてったって彼の精神力は異常だ。それでいて頭脳明晰。あの子なら電脳獣を操るなんて、朝飯前なのかもしれないね。
それでも穿城で戦うなんて馬鹿な真似をしてくれたもんだ。そう思うだろう? 研究所の密集地で戦うなんて、それも本気の戦いをするなんて、正気の沙汰とは思えない。そこはまだ小学生といったところなのか。はたまた自分の敷地だからどうとでもあると思ったのか]
まるで濁流のように乱打される言葉の波に、次第にスバルは押されていく。怖かった。電波人間でも武器も持っていない人間が、自分の存在を消してしまいそうで。
『ビーストスイング!』
突如ウォーロックは雷伽に向かって研ぎ澄まされた爪をたてた。まさか人を殺した!? けれど血などは一切出ない。それよりも雷伽の姿が神隠しにあったかのように消失してしまった。
「はいはいこんにちは」
代わりに現れたのは、長い黒髪を持つ少女だった。さっきまで話していた雷伽はマネキンのようなロボットだとスバルに説明する。あくまでいたずらだと。
『…………てめえは、誰だ? こんな趣味の悪いことをしやがって』
ウォーロックは目の前の少女にそう尋ねる。すると少女は簡単に答えてくれた。
「黄璃光、覇神黒影の友人だよ」
未だウォーロックが雷伽を殺したのだと誤解してしまっているため、光は懇切丁寧に事情を説明する。スバルは「よく分からない人」と認識した。
そんなことでは光のことを納得できないウォーロックは質問していく。
『おまえ、キリュウを知っているよな』
「うん」
簡潔に光は答えた。キリュウのことについては詳しく話す気はないと告げる。ウォーロックは軽く落胆しながら、光の首下に爪を光らせた。
『んで、どうするんだ? 話すのか?』
スバルの静止にも応じる様子を見せないウォーロックは光からキリュウのことを聞き出そうとする。世界を滅ぼしてしまうかもしれない男について。
「────それじゃあ私には届かない」
が、一瞬でウォーロックは昏倒させられてしまった。何か、不思議な光が発しウォーロックを倒してしまったのだと気づいたときには、もう光は病室の出口へと向かっていた。
「ただ私の病院でそんなことをしちゃいけないな。小学生って言ったって、一応自衛のためのことはするんだよ」
TKシティの外れ、カイは世話になった老人の店に寄ると「今日は何か不幸なことが起こりそうだ」と言われる。顔を店に来てやったのになんて奴だと思いながら店を出る。
「よう、久しぶり」
店を出てから数分後に声をかけられた。声の主は赤崎烈火。髪を真紅色に染めた、カイの元宿敵だった。カイが二年前まで剣道をしていたときのライバル。正確にはカイは烈火の足元にすら及ばなかったが。
「元気してたか? カイ」
「……まあな」
昔の自分を知っている人間に会うことは好きではなかった。捨てられる前の自分など、思い出したくも無い。
「剣道やめてびっくりしたんだぜ。噂は聞いていたけどね」
「そりゃどうも。おまえはあのときから変わらず最強の名を手にしているのか?」
「いや、やめたよ」
その言葉にカイは眉をひそめる。あれだけの才能があった男が、何故そんな勿体無いことをするのか。
「もっと面白いことを見つけたんだよ。最高の喜劇ってやつをな」
「なんだそれ」
「おまえにも見せてやるよ、カイ。おまえは主賓だからな。おまえの夢の果てを、教えてやるよ」
そういい残し、烈火はどこかへと聞けていく。その背中を、カイはただ見つめた。
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2012年 11月30日 (金) 23時02分
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