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【放送芸能】

まさか信長役びっくり 及川光博 「相棒」の次は時代劇

 成功した作品の「次」は重要だ。昨年、人気ドラマ「相棒」の神戸尊役を卒業した及川光博。注目されていた「次」は、テレビ朝日「信長のシェフ」(金曜午後11時15分)だった。深夜枠で時代劇、しかも織田信長役。「ビックリして笑った」という及川に、新たな役への意気込みを聞いた。 (宮崎美紀子)

 「『相棒』のオファーが来た時も驚きすぎて笑っちゃったんですけど、今回の信長も半笑いでしたね。『え、うそお』って。想像だにしないことが起きると、言葉が出ないというか笑っちゃうんです」

 ドラマ「信長のシェフ」は、現代から戦国時代にタイムスリップしたフランス料理の料理人・ケン(玉森裕太)が信長と出会い、当時は誰も知らない料理で信長の覇道の一助となる物語。原作は「週刊漫画TIMES」に連載中の梶川卓郎さんの同名コミック。設定は荒唐無稽だが、京都・太秦の東映のスタッフが手掛けており、時代劇としての「本物感」もある独特な作品になっている。

 戦国時代といえば、及川は二〇〇二年のNHK「利家とまつ」で前田慶次郎を演じている。かつて王子を名乗り、キラキラしていた彼に、「かぶき者」の慶次郎はピッタリだった。そして時を経て四十代になった今、戦国武将で一、二を争う有名人「信長」が巡ってきた。

 「やっぱり分を知っていますので、明智光秀くらいかなって思っていたんですけど」

 むしろ光秀は以前からやりたかった役。解釈次第でいろんな演じ方ができるからだ。一方、有名すぎる信長は、イメージが出来上がっている。表現者として新しい信長像を見せたいという欲はあるが、完璧な自己プロデュースを貫いている音楽活動とは違い、俳優業は「監督、プロデューサーの意見はきちんと聞く」と謙虚。そのうえで、「生涯一度のチャンスだから、悔いなく信長として生きたい」と意気込む。

 物語としての魅力は、「歴史が変化するそれぞれの局面に現代人の料理があり、ナイスアシストをしているところ。歴史マニアも、なるほどって腑(ふ)に落ちる」という。

 例えば第一話で信長が宣教師フロイスと初めて会う場面。布教活動に悩んでいたフロイスに、ケンは故郷ポルトガルを思い出させる料理を出し、感涙したフロイスは信長とあつい友情を結ぶ。フロイスが信長の信任を得て、布教に励んだのは史実。エピソードはあり得ないのに、歴史的につじつまが合うところが、及川の言う「腑に落ちる」面白さだ。

 若い人に人気がある深夜ドラマで、時代劇をやれることにも意義を感じている。

 「時代劇、楽しいですよ、本当に。よく居酒屋なんかで中年男性が『俺はやっぱり家康だなあ』とか語ってますけど、そういうことが脈々と続いていけばいい。何百年たった今も、『武士の心』や『侍』という言葉にひかれているわけじゃないですか。和の美学だと思うんです」

 思い描くのは、何十年後かに今の若い視聴者が飲みながら「信長が」「家康が」と語る光景。そして、その時には「及川の信長、良かったよね」と言われたいという。

 「演じる以上は、人の記憶の中に足跡を残していきたいですよね」と言葉に力を込めた。しかも時代劇の記憶は、いつまでも古びない。「だって古くなりようがないんです、古いんだから」

 

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