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2013年1月6日(日) 東奥日報 ニュース



■ 語り継がれる「民次郎一揆」

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弘前市鬼沢の自得小学校で、児童たちに民次郎一揆を語り継ぐ藤田日出子さん
 
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一揆当日の未明、民次郎が一揆の成功を祈願したとも伝えられる鬼神社
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 毎年旧暦の正月、しめ縄を担いだ締め込み姿の男たちが練り歩く「裸参り」が行われる弘前市鬼沢地区。男たちが冷水の入ったたるで身を清める鬼神社から目と鼻の先にある墓地に、民次郎はひっそりと眠っている。

 中央に「獨峯了身信士」、左右には「文化十癸酉歳」「十一月廿六日」と彫り込まれた高さ130センチほどの自然石が民次郎の墓だ。

 藤田日出子さん(63)は約40年前、鬼沢地区に嫁いできて初めて民次郎たちが起こした一揆のことを知った。後世に伝えようと20年ほど前から近くの自得小学校に通い、子どもたちに語りかけている。

 「殺されるのが分かっていながら、あえて立ち上がった民次郎たちの話を通して、物を大切にする心、苦しむ人たちへの本当の思いやりの心を伝えていきたい」。藤田さんの語りに、子どもたちはじっと耳を傾けてくれる、という。

離縁で難避ける

 凶作に加え、藩が進めていた領内開発と年貢の増徴、蝦夷地警備による負担増などに農民たちはあえいでいた。一揆の全容は、かつて自得小校長を務めた故・須藤水甫氏が、弘前藩庁日記などからまとめた「義人藤田民次郎伝」や弘前市史に記されている。

 それらによると、9月28日(旧暦)未明、藩内の数十の村ごとに集まった高杉組、藤代組、広須組、木造新田組などの農民たちが、岩木川の河原に集まった。冷害で実らなかった稲を結びつけた竹竿やムシロ旗を立て、ナタや鎌を手にした農民たち。午前6時ごろ、弘前城へ向かって行進を始めた。一説には、沿道の農民たちも続々と参加し、その数は2千人に膨れ上がったともいわれている。

 一揆の首謀者は処罰を免れない。難が及ぶのを避けるため、妻子を離縁した民次郎は一揆当日の未明、鬼神社で一揆の成功を祈願したといわれる。その覚悟のほどがしのばれる。

 須藤氏によると、実は、この数日前にも、藩内の農民たちは連続して4度、一揆を企てている。しかし、計画は藩側に事前に漏れるなどして失敗。28日の決起は9月26日、農民たちが岩木山麓で最後の密会を開き、決めたといわれている。民次郎たちが弘前城の亀甲門に迫って藩に願書を渡したのは、5度目の挑戦の末だった。

 一揆の後、民次郎は首謀者として馬に乗せられ城下を引き回された後、11月26日に取上の刑場で首をはねられたと伝えられている。

 「電話やメールがない当時、しかも、お上にたてつく行為は見つかればすぐさま処刑された。一人一人が何をしようとしているのか、しっかりとした意識を持っていたのではないでしょうか。一人一人が行動の目的を共有し、それを統率するリーダーがいること。一揆の成功には、この点が不可欠だったと思います」

 「義民・民次郎顕彰の会事務局」の弘前市高田の佐々木憲一さん(62)は、現代のわれわれにも、あらためて考えさせるものがあると指摘する。

行動の意味重要

 国際農業論や協同組合論が専門の弘前大学・神田健策副学長は、民次郎一揆を調査し、この一揆に関する史料を取り上げた「弘前市史」作りにも携わった。

 「盛岡藩で1847(弘化4)年に起きた三閉伊一揆に匹敵する規模の一揆。北東北に限ってみても、規模の大きい運動だったと言える」。神田副学長は、一揆の意義を強調する。

 一方で、民次郎一揆について、しっかりとした評価がなされてこなかった−とも指摘する。「貧しかった人たちが藩に抗議したという単純な話ではない。当時は御法度だった一揆に、命をなげうってでも組織で立ち上がった人たちの(歴史的な)評価が忘れ去られている」

 現代に問いかけるものは何か。神田副学長は言う。「自分たちが置かれている社会情勢や政治状況を自らのこととして引き受ける。その上で、どう生きていかなければならないのか。民次郎たちが行動を起こした意味をくみ取っていかなければならない」

 鬼沢地区では毎年11月26日、地区の人たちが民次郎の墓前と位牌(いはい)に供物や花を供え線香を手向けてきた。これまでも10年ごとに法要を営み厳かに節目を迎えてきた。

 民次郎一揆から200年を迎えた13年、地区では鬼沢公民館が中心となって催しを執り行うという。

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