コラム:「1―2%インフレ」なら株価はどこまで回復するか=竹中正治氏

2013年 01月 11日 19:25 JST
 
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竹中正治 龍谷大学経済学部教授(2013年1月11日)

安倍政権の下で日本経済がデフレ基調からマイルドインフレ(消費者物価指数で前年比1―2%)に転換できた場合、株価がどこまで回復するか簡単な試算をしてみよう。

前回(here)述べたとおり、マイルドインフレに転換した場合、長期国債利回りの上昇(価格の下落)は不可避であるが、それは経済にとっても投資家にとっても必ずしも悪いことではない。ポートフォリオの比率を債券から株式や不動産にシフトした投資家にとっては投資リターンの向上が期待できるからだ。逆に2012年までに株式から国債にシフトしてしまった投資家や、もともと国債に傾斜し過ぎている機関投資家にとってはマイルドインフレへの転換は災いになるだろう。

結論を先に言うと、今年の世界経済が再び景気後退に逆戻りするようなことがない限り、日本株の上昇余地は大きい。目先1―2年では東証株価指数(TOPIX)で1100(1月11日終値898)、日経平均で1万3000円台(1月11日終値1万0801円)、中期的にはその水準からさらに10―20%程度の上昇余地があるだろう。

<ファンダメンタルな価値との乖離と回帰を繰り返す>

金融・投資分野の方は承知のことだが、株価のファンダメンタルな価値とは企業が将来にわたって生み出す1株当りの純収益(キャッシュフロー)を投資家が求めるリターンを割引率にして計算した現在価値の合計である。したがって株価の変動は予想される将来の資本利益率(ROE)の変化と強い相関関係を持つ。ところが将来の資本利益率の予想は困難かつ不確実なので、現実の投資家の予想は直近の資本利益率に左右され、悲観的にも楽観的にもなる。このように考えるのが正しければ、株価の変動はその期の資本利益率と高い相関関係があるはずだ。

「金融・投資理論のとおりにはならないのが株式相場だ」と考えている方も多いだろうが、株価の短期変動の予想は困難でも、株式市場全体の趨勢的な動向はファンダメンタルな価値との乖離(かいり)と回帰を繰り返す。

実際にそれを示そう。1996年以降のTOPIX(年間平均値)の前年比と日本の一般企業全体の資本利益率(経常利益ベース、財務省法人企業統計「全産業(除く金融・保険)」)の相関関係を示したのが、下の散布図である。   続く...

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1月11日、龍谷大学の竹中正治教授は、目先1―2年ではTOPIXで1100、日経平均で1万3000円台、中期的にはその水準からさらに10―20%程度の上昇余地があると分析。提供写真(2013年 ロイター)

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