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2013年1月16日(水)付

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被災住宅再建―「共助」の備えが必要だ

この地震列島では、だれもが被災者になる可能性がある。あすで18年になる阪神大震災の大きな教訓は、被災地で暮らす人たちが生活の基盤である住まいを取り戻さなければ、復興は進[記事全文]

デフレと春闘―賃上げへ発想の転換を

安倍政権が日銀に2%のインフレ目標を求め、物価上昇にあの手この手を尽くす状況下で、今年も春闘が始まる。労働側は、連合が1%の賃上げを目ざすが、経団連はまったく取りあわず[記事全文]

被災住宅再建―「共助」の備えが必要だ

 この地震列島では、だれもが被災者になる可能性がある。

 あすで18年になる阪神大震災の大きな教訓は、被災地で暮らす人たちが生活の基盤である住まいを取り戻さなければ、復興は進まないということだった。

 残念ながら、東日本大震災でこの教訓が生かされたとはいいがたい。

 しかも政府の試算では、首都直下地震では85万棟、南海トラフの地震では94万棟が全壊するとの想定さえある。

 今の制度のままでは、とても、大地震後の住まいの再建はおぼつかない。リスクから目を背けず、必要な措置を一刻も早く実現すべきだ。

 住まいの再建にはまず、貯蓄や任意の地震保険を使う「自助」がある。ただ、地震保険の加入率は全国平均で3割以下だ。十分な貯蓄のある人も限られている。

 次に頼れるのが、現行の被災者生活再建支援法の制度である。都道府県による基金と国費を財源に、被災した家に住む人に最高300万円の支援金を支給する「公助」の取り組みだ。

 ただ、近年の相次ぐ自然災害で基金は552億円に落ち込んでいた。そこへ東日本大震災が起きた。12万棟が全壊し、民主党政権は支援金の総額を4400億円と見積もり、補正予算で不足分を補った。

 今後の被害を考えると、「公助」にも限界がある。厳しい財政事情のなか、制度そのものが破綻(はたん)しかねない。

 巨大災害に備えるためにも、新たな「共助」の仕組みが必要だろう。

 全国の家の持ち主が掛け金を出し、住宅が被災した際に保険金を受け取る仕組みである。

 参考になるのは、「阪神」の直後に国会議員有志がまとめた住宅共済の制度だ。家の持ち主全員が月千円程度の掛け金を支払い、共済保険を受け取るアイデアだった。

 車の保険である自賠責保険は、誰もが事故にあうリスクがあることから、強制加入となっている。これを参考にした提案だった。

 保険制度には公平性が大事である。現段階では地震リスクが低い地域で暮らす住民からの異論も予想されるが、地震学の進歩により、新たな活断層が次々と見つかっている。私たちは等しく、地震列島で暮らしているのだ。

 「自助」「公助」「共助」の三つを組み合わせて、次の災害に備える。政府、与野党を問わず知恵を出しあって、制度整備を急いでもらいたい。

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デフレと春闘―賃上げへ発想の転換を

 安倍政権が日銀に2%のインフレ目標を求め、物価上昇にあの手この手を尽くす状況下で、今年も春闘が始まる。

 労働側は、連合が1%の賃上げを目ざすが、経団連はまったく取りあわず、定期昇給も見直す構えだ。会社の業績が優先の経営側からすれば、景気のために賃上げするのはナンセンス、かもしれない。だが、ここは柔軟な発想で賃上げへの展望を開いていくべき時だ。

 実際、賃金を上げずに物価の上昇だけを期待するのは合理的だろうか。なにより、それは経済にとって望ましいか。

 そう考えた政府も、経済対策のなかに、給与を増やしたり、雇用を増やしたりした企業への法人減税を入れた。

 しかし、企業が政策に反応しなければ意味がない。「1社だけではとても」と、どの経営者も思うだろう。けれども、このような総すくみの状況でこそ、春闘という大きな議論の場の効用があるのではないか。

 かつてインフレが世界的に深刻だった1970年代、物価上昇を止める手だてとして賃上げを抑える所得政策があった。日本では石油危機の際に労使協調の春闘で賃上げを抑制した。欧米のようなインフレの悪化を免れ、その実例ともいわれた。

 逆に、バブル崩壊後のリストラの嵐の中で、産業界は利益が増えても賃金は抑えてきた。全体として見れば、デフレを固定する所得政策が断行されてきたようなものではないか。

 これはメーンバンクの力が落ち、代わって企業が株主の利益を最優先することを迫られた結果でもある。だが、バブルの後始末もとうに終わったいま、株主への利益還元が優先されるあまり、中長期的な成長への投資が圧迫されていないか。

 とりわけ、割を食っているのが「人への投資」だ。労働側は「会社がつぶれては元も子もない」という企業別組合の弱みもあって、押されっぱなしだ。

 結果、勤労者の購買力はむしばまれ、日本市場の縮小を助長した。ホームグラウンドの市場が縮んで、日本企業の競争力まで侵食され始めている。

 大胆な金融緩和と財政膨張という形で、政府は「信用」をすりつぶしながら当面の景気を浮揚しようとしている。危険が伴うだけに、政策を空回りさせるべきではない。

 縮小への惰性を、企業の労使で断ち切ろう。成長への投資を増やし、そのなかで賃金の改善や、次代を担う若い労働力の正規化など「人への投資」を位置づけ直す道を探ってほしい。

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