伊方原発:全基停止1年 八幡浜・伊方、救済策乏しく地域疲弊 廃業したホテルも /愛媛
毎日新聞 2013年01月13日 地方版
四国電力伊方原発(伊方町)の全3基停止から13日で1年。東京電力福島第1原発事故の影響で再稼働のめどが立たない中、原発と共生してきたお膝元「八西地域」(八幡浜市、伊方町)では経済への影響が深刻化している。救済策も乏しく、立地地域は疲弊。ホテルの廃業も現実になった。【中村敦茂】
八幡浜市内の幹線道路沿いにぽっかり設けられた駐車場。ここにはかつて6階建てのホテルがあった。
1基あたり約3カ月間の定期検査中、伊方原発では作業員が通常の約1700人から約2500人に膨らむ。八西地域には各地からの作業員を受け入れる宿が多くある。このホテルもその一つだったが、全基停止を目前に控えた一昨年末、営業を終了。建物は昨春、取り壊された。
「客の6、7割が定検の作業員。これがゼロなら年間1000万円の赤字。最低2基が動かないと利益が出ないが、そんな見通しは立たない。もう無理と思った」。実質経営者だった男性(65)が明かす。
八幡浜商工会議所の昨年8月の調査では、「全基停止で影響が出た」という事業所が46%。伊方町商工会の同6〜9月の調査(合併前の旧伊方町対象)では、旅館や飲食店などを中心に43%が景況が「悪い」「やや悪い」と回答した。八幡浜市だけで年間67億円(市推計)とされた原発の経済効果がしぼんでいる。
国の特段の救済策がない中、市がバスツアーに補助金を出したり、町商工会による旅館での食事代割り引きなどの、既存制度を活用した支援がなされてきた。しかしそれだけでは十分ではない。
伊方町役場そばの「つるや旅館」。最後の定検客が去った3月以降、「宿泊客ゼロ」はもう10カ月。経営者の三好章一さん(74)は「観光地ではないから、発電所の人の世話がすべてですけんね」と嘆いた。
作業員の送迎を業務の柱とする八幡浜市内のバス会社でも男性社長(58)が苦境にあえぐ。「貸し切りの仕事を少しでも増やそうとしているが限界がある。(原発からの)方向転換はできない」
三好さんも社長も「福島事故後の四電の対策で、安全は強化されていると思う」として、安全を前提とした再稼働を切望する。しかし原子力規制委員会の審査基準づくりだけで7月までかかるうえ、以後の審査期間も不透明だ。再稼働自体に反対の世論も強い。