• 『夏祭りの悲劇』 蒼き流星 希望への架け橋 ダイジェスト4
  • ※これは「流星のロックマン」というゲームの二次創作です。あらかじめご了承ください




















    ■8月2日

     それからスバルは完治するまで両親の手厚い介護とルナルナ団(ルナ、ゴンタ、キザマロ、カイ)の見舞いによって、無事退院することが出来た。

    「よう、元気してたか?」

     カイが現れたのは、スバルの退院前日だった。遅い見舞いだということはカイも自覚していたらしく、「遅れたけど」といいながらフルーツバスケットを手渡す。

    「ありがとう、カイ君」
    「別に気にするな。……何かあったのか? 少し痩せたな」
    「……ちょっとね」
    「あんまりそういう姿を俺に見せないで欲しいな。おまえには俺、憧れているんだ」
    「……え?」

     スバルにとってそれは意外だった。いつも自分に厳しいカイが、まさかそんな思いを抱いていたなんて。

    「世界を救うおまえに、俺は憧れていた。敵を倒しみんなから羨望されるおまえを、俺は羨ましかった。だから俺はおまえに対し少し厳しかった」
    「……失望した? こんな弱い人間で」
    「そうかもな。でも、同時に嬉しかった。おまえみたいな人間に、俺もなれるのかなって」
    「ぼくのおかげじゃない。ウォーロックのおかげだよ」
    「なら、俺はゲイルと力を合わせておまえのようになるよ」

     そこで笑みを消し、唐突にスバルにカイはこう訊いた。

    「……なあ、スバル。明日夏祭り行くんだっけ?」

     首肯するスバルに対し、カイは真剣な面持ちで口を開く。

    「世界を救うために、おまえはこの世界から消えてくれるか?」


    ■8月3日

     
     予定通りにルナルナ団のメンバーとスバルは夏祭りに来ていた。カイは友人と行動を共にするためスバルたちとは同伴しない。けれど予想外な来訪者がやってきた。

    「あれ? スバルくんたちじゃん!」

     天涯祭りほど大規模なイベントにアイドルはつきもの、響ミソラも少々の休み時間を貰いルナルナ団と行動を共にすることになる。カイは怪しい商人からもらった「ボイスチェンジャー」なるアプリを使いスバル、ゴンタとキザマロと遊んだりと、楽しそうに過ごしていた。ジャックやツカサたちも参加して、そろそろ花火ではないかと思われる頃、一帯の明かりが全てかき消された。
     続いて聞こえてくるのは悲鳴と、それに連なる爆音。五つの方角から爆発が起きるていることを察すると、すぐさま電波変換し5人の電波人間は事態を収拾しようと向かう。
     スバルが向かった先、祭りが行われた場所の外れには一人の剣士が立っていた。シルバー・ウィンドとは対称の、黄金の騎士。ポラリスと名乗ったウィザードは、スバルへと流麗なロングソードを向ける。

    『戦ってもらおう。あなたが、邪魔だ』

     同時刻、四方向へと分かれたミソラ、ゴンタ、ジャック、ツカサは敵が徐々に離れていくことを察する。ミソラ以外の3人は敵を追っていくが、ミソラはスバルが向かっていった先に爆発とは比にならないほどの光を発見した。

    「…………胸騒ぎがする」

     ミソラから離れていく敵をサテラポリスに連絡し、暁達に任せるとミソラはスバルの元へと向かう。けれど待っていたのは非情な光景だった。体を何百という剣戟によって血だらけになったスバル。誰から見ても虫の息の彼は、しかし黄金の騎士へと立ち向かうことをやめない。

    『もう、死んでください』

     止めとばかりに斬りつける騎士。その一撃にあわせるかのようにスバルは「ヘンゲノジュツ」を使い相手の背後を取った。勝った。ミソラがそう思った瞬間に、後ろに目でもあるかのよう騎士はスバルを串刺しにした。

    『これで終わりです』
    「…………ぃ、ぃぃいいいやあああああああああああああああ!!!」

     スバルは、ロックマンの体は、その粒子を撒き散らしながら、夏の夜空へと消えていった。最後に、何かを伝えることも出来ずに。無力な彼は、敵に何も出来ないで、死んだ。

     彼女の視界の隅に、憎しみを司る少年が、見えたような気がした。けれどミソラは、それを認識することはなかった。


    ■8月6日

     
     サテラポリスニホン支部、およびWAXAからロックマンが死亡したことを発表。またその少し前にアメロッパにあるヴァスティーニア牢獄からヘイトのオペレーター、ギンガが何者かの手引きにより脱獄したことも表明。これにより世界が再度恐怖に包まれる。
     アメロッパ本部からシルバー・ウィンド討伐部隊がニホンに到着。目的を「シルバー・ウィンドのデリート、およびこれから出現するであろう敵の排除」とギーラが高らかに宣言する。また指揮を全権ギーラに委ねる方針を長官が発表。暁、クインティアが駆り出されることになる。
     
     ルナルナ団の面子はスバル死亡のショックから抜け出せずにいた。全員が茫然自失している状況で、暁達サテラポリス・WAXAの人間は何もいわなかった。「子供たちに立ち直れというのは、あまりにも酷すぎる……!」
     ギーラは当初、ミソラたちも戦力として数えていた。「あんな子供たちは使い物にならない。せめてウィザードだけでも徴兵したい」と長官に申し出る。けれどその前にミソラたちをサテラポリスの直属から外しており、ギーラはミソラたちに指図できなくなる。

    「まさか、あの子達に自分のウィザードすらも失わせようと?」
    「世界がそれで救われるなら、仕方のないことなのでは?」


    ■8月7日


     午前零時、サテラポリス連合軍に何者からかのメッセージが届く。

    『我らは人類の敵であり、これからあなた方を殲滅する。我らの名は『ロード』。3日後の10日から世界を敵に戦争を行う』

     世界中にこの宣言が報道され、各国のサテラポリスが迎撃体制を作り上げ始める。またリゾート地などもすぐさま閉鎖されバトルウィザードが街中に展開される。「本当に、戦争なんだ…………」

     ギーラが本部で行われる会議に呼び出される。ニホンを離れる前に「まずは周りを掃除しなければ」と部下に指示。
  • 2012年 11月30日 (金) 23時04分
コメントの書き込みはログインが必要です。