シリア・アラブの春(シリア革命2011)顛末記

2013年1月13日のシリア情勢

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1国内の動き(シリア政府の動き)

 シリア国内の複数の女性団体が共同声明を出し、「シリア人女性平和構築会合」の立ち上げを宣言し、ジュネーブ合意に基づいた紛争解決に向けたプロセスの開始を呼びかけた。

 「シリア人女性平和構築会合」に参加した女性団体は、シリア国家建設潮流女性民主会合、シリア人女性民主行動委員会、民主的変革諸勢力国民調整委員会女性局、アレッポのための協会、生活のための女性、クルド・スィタール連合のクルド人女性、無所属女性活動家。

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 ワーイル・アル=ハルキー内閣は1月8、9日の緊急閣議の決定に従い、危機解決に向けたプログラムに関する内閣の決定を実施するための閣僚委員会(作業チーム)を正式に設置した。

 同委員会は、首相、経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣、運輸大臣、情報大臣、工業大臣、法務大臣、国民和解問題担当国家大臣、赤新月社担当国家大臣、人民議会担当国家大臣からなる。

国内の暴力

 ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ハッザ市での砲撃で、子供複数を含む9人が死亡した。

 またカフルバトナー市、アルバイン市に対して軍が空爆を行い、多数の市民が負傷、ドゥーマー市、アクラバー市、バイト・スィヒム市、マアダミーヤ・アッ=シャーム市、アル=ムライハ市、などが砲撃を受けた。

 このほか、ジャルマーナー市、ダーライヤー市、アル=ムライハ市(防空局周辺)、アクラバー市、カフルバトナー市などで、軍と反体制武装勢力と交戦した。

 一方、SANA(1月13日付)によると、ドゥーマー市郊外、ダーライヤー市、アル=ムライハ市、ヤルダー市、アル=バフダリーヤ市、マシュルーア・アル=フサイニーヤなどで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷、拠点を破壊した。

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 ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ地区各所で政権を支持する民兵と反体制武装勢力が交戦した。

 またAFP(1月13日付)によると、軍がアル=ヤルムーク地区周辺(アッ=ザフラー地区)の住民に対して、同地区での反体制武装勢力との戦闘拡大の可能性を懸念し、一時退避を呼びかけた。

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 アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アアザーズ市が軍の空爆を受け、数十人が死傷し、トルコ領内のキリス市に搬送された。

 またマング軍事飛行場周辺、アン=ナイラブ軍事飛行場では、軍と反体制武装勢力が激しく交戦した。

 一方、SANA(1月13日付)によると、マング市、ラスム・アル=アッブード市、カシーシュ市、アッ=サフィーラ市、アン=ナイラブ市、アッ=ドゥワイリーナ地方などで、軍が反体制武装勢力に対する特殊作戦を行い、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

 またアレッポ市のアル=カッラーサ地区、アッ=スッカリー地区、バーブ・アン=ナイラブ地区、バニー・ザイド地区、アッ=ライラムーン地区などで、軍が反体制武装勢力の追撃を行い、多数の戦闘員を殺傷した。

 このほか、反体制武装勢力がアレッポ市アッ=ライラムーン地区で電力復旧作業を行っていたアレッポ電力社の労働者を襲撃し、1人が負傷した。

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 ダルアー県では、シリア人権監視団によると、反体制武装勢力が占拠するバスル・アル=ハリール市に軍が突入を試み、激しく交戦した。

 一方、SANA(1月13日付)によると、爆弾を積んだ車でナーミル市の検問所を襲撃しようとした反体制武装勢力を軍が撃退した。

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 ヒムス県では、シリア人権監視団によると、アッ=ラスタン市が激しい砲撃を受けた。

 一方、SANA(1月13日付)によると、ブワイダ・シャルキーヤ市、アッ=ラスタン市郊外で軍が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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 ハマー県では、シリア人権監視団によると、ティーバ・アル=イマーム市を軍が空爆した。

 一方、SANA(1月13日付)によると、ティーバ・アル=イマーム市で、軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、逮捕した。

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 ダイル・アッ=ザウル県では、SANA(1月13日付)によると、アブー・ハシャブ地方で軍が反体制武装勢力を攻撃し、戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

反体制勢力の動き

 シリア反体制勢力の複数の消息筋は、『アル=ハヤート』(1月14日付)に対して、アル=アサド政権との移行期をめぐる対話のために、反体制勢力が暫定政府樹立宣言の準備を進めている、と述べた。

 同暫定政府首班にはリヤード・ファリード・ヒジャーブ前首相が最有力視されているという。

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 シリア国民変革潮流は、声明を出し、米国に対して「政治的解決という幻想」を捨てるよう呼びかけた。

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 民主的変革諸勢力国民調整委員会のマフムード・マルイーは声明を出し、委員会を脱会すると発表した。

 委員会が国民の意思に従い、国内の暴力を停止させることができないことが脱会の理由。

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 民主的変革諸勢力国民調整委員会のバッサーム・アル=マリク(シリア商業会議所事務局メンバー)が声明を出し、委員会を脱会すると発表した。

 「革命」を支持し、後退を拒否する、というのが脱会の理由。

諸外国の動き

 『アル=ワタン』(1月13日付)は、信頼できる複数の外交筋の話として、アル=アフダル・アル=ブラーヒーミー共同特別代表の12月末シリア訪問でのアル=アサド大統領との会談の様子と1月11日のジュネーブでの米露高官との会談の様子を報じた。

 同報道によると、アル=ブラーヒーミー共同特別代表はアル=アサド大統領との会談で、撮ることカタルがテロ組織への支援を停止せず、安保理でも両国を説得することが不可能だと述べ、その任務が事実上無益であることを示したという。

 またアル=ブラーヒーミー共同特別代表は、アル=アサド大統領に次期大統領選挙への出馬辞退の可否について尋ねたが、大統領は次のように答え、会談を終えたという。

 「地位は最後に問題になる。一番重要なのは人民の意思と国益だ…。私は船が揺らいでいるのを感じただけで逃げ出すような船長ではない」。

 一方、ウィリアム・バーンズ米国務副長官、ミハエル・ボグダノフ露外務副大臣との会談に関して、同紙は、アル=ブラーヒーミー共同特別代表が湾岸諸国、トルコ、米国の立場を代弁し、中立的な仲介者として振る舞わなかったと批判した。

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 カイロでアラブ連盟の緊急外相級会議が開かれ、そのなかでナビール・アル=アラビー事務局長は、「国連憲章第7章に基づき、平和維持軍の派遣を通じた停戦を科すこと」が「危機を終わらせる唯一の方法」だと述べた

 アル=アラビー事務局長は、11、12日に潘基文国連事務総長、アル=アフダル・アル=ブラーヒーミー共同特別代表と電話会談し、国連憲章第7章に基づく対シリア安保理決議の採択について協議した、という。

 緊急外相級会議では、シリアの周辺諸国への避難民の流入問題が審議され、レバノン、ヨルダン、イラクに、シリア人避難民の状況を調査するためのチームを派遣することが決定された。

 また会議では、レバノンがシリア人避難民とパレスチナ人難民・避難民を支援するための1億8000ドル相当の支援要請を行った。

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 ロシアの複数のメディアはセルゲイ・ラヴロフ外務大臣が、「我々のパートナーは政治プロセスからアル=アサド大統領をあらかじめ遠ざける必要があると確信している。しかしこれはジュネーブ合意で規定されていない前提条件である。政治プロセスにおける片方の手が失われるため、そうしたことは不可能なのだ」と述べたと報じた。

 またラヴロフ外務大臣は「アル=アサド大統領のイニシアチブは…おそらく不充分だが…、提案がされたのだ…。私が反体制勢力の立場だったら…、どのように対話を行うかについての持自分の考えを提示することで応えるだろう」と述べた、という。

 AFP, January 13, 2013、Akhbār al-Sharq, January 13, 2013、al-Ḥayāt, January 14, 2013、Kull-nā Shurakā’, January 13, 2013、al-Kurdīya News, January 13, 2013、Naharnet, January 13, 2013、Reuters, January 13, 2013、SANA, January 13, 2013、al-Waṭan, January 13, 2013などをもとに作成。

 写真はKull-nā Shurakā’, January 13, 2013。

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