特集:死刑囚の生活空間公開 「その日」までの生 医療設備充実、「スタミナ焼き」人気
毎日新聞 2013年01月14日 東京朝刊
居室と同フロアに理髪室もある。死刑囚は受刑者と異なり、髪形はルール化されていないが「衛生的でなければならない」との決まりがある。髪を切るのは「衛生係」の受刑者。理容師免許の持ち主もいるという。
居室では、拘置所が作成したリストから選んで映画などのビデオを視聴できる機会もある。ただし「心情の安定」に資することを目的としているため、殺人や逃走の場面が出るビデオは含まれない。
書籍は自費で1週間に3冊まで購入でき、拘置所が所蔵する「官本」も1週間に3冊まで借りられる。新聞は自費で一般紙とスポーツ紙を1紙ずつ購読できる。書籍も新聞も「拘置所の規律秩序の維持を害する可能性がある」と判断された場合は、購入が許可されないこともある。
居室で小動物や鳥、魚などの生き物を飼育することはできないが、花瓶などに花を生けることは許可される場合があるという。
◇誕生日にケーキも 手引書「悩み焦ることなく、落ち着いて」
死刑囚の処遇に関する内部文書を開示したのは、いずれも死刑囚を収容する札幌拘置支所(札幌刑務所内)と仙台拘置支所(宮城刑務所内)、東京、名古屋、大阪、広島、福岡各拘置所の計7施設を管轄する各矯正管区。毎日新聞が昨年9月に行った情報公開請求に応じ、翌10月に「死刑確定者処遇規程(または要領)」や「死刑確定者用 所内生活のしおり」などを開示した。
各施設の処遇規程は刑事収容施設法に基づき、死刑囚の処遇について具体的な運用方法を定め▽運動▽入浴▽健康診断▽調髪▽洗濯▽教誨▽書籍閲覧−−など日常生活のルールを記載している。特に面会や手紙など外部交通のルールはきめ細かに定める傾向がある。
どの施設の規程も、死刑囚の「収容の確保」と「心情の安定」を目的とし、逃走や自殺を招かないよう配慮を求めている点は共通している。一方で、死刑囚が逃走を企てて居室で不正な細工をすることを防ぐ目的で数カ月ごとに引っ越しをする「転室」のペースや、テレビやビデオの視聴が許可される頻度など、施設によって細部で異なる部分もある。