特集:死刑囚の生活空間公開 「その日」までの生 医療設備充実、「スタミナ焼き」人気
毎日新聞 2013年01月14日 東京朝刊
運動時間は毎日1回30分間。他の収容者や職員と一緒に行うことはできないが、雨でも本人が希望すれば使用できる。履き物はスリッパかサンダルと決められ、唯一貸し出される用具は縄跳び。通常は場内で走ったり、歩き回ったり、体操をする程度という。爪切りも運動時間にすることになっている。
食事は主食のご飯が1日1200キロカロリー、副食のおかずは1日1020キロカロリーを基準とする。ただし主食については体格で微調整する場合もある。予算の範囲内で正月におせち風の料理、クリスマスにはケーキが出されることもある。
刑務官によると、人気メニューは豚肉に韓国風辛みそのコチュジャン、ニンニクなどで味付けした「スタミナ焼き」。取材当日の朝食のおかずは、かつおフレーク、ふりかけ、大根・ナス・インゲンのみそ汁。昼食はスタミナ焼きと切り干し大根、中華ナメコ汁だった。
死刑囚は1人で居室内の小型テーブルで食事をする。通常は木製の箸を使用しているが、自殺の可能性がある死刑囚には曲がりにくい紙製のスプーンを与えることもある。
死刑囚が「心情の安定」を目的とした「教誨(きょうかい)」(教えや諭し)を、宗教家である教誨師から受ける教誨室は、仏教用とキリスト教用の2室ある。仏教用の部屋は畳の敷かれた和室で、仏壇が備え付けられ、仏教関係の書籍が並ぶ本棚がある。キリスト教用の部屋には十字架やろうそく立て、聖書が備え付けられ、教誨師と死刑囚が賛美歌を合唱するための音楽プレーヤーが置かれていた。
死刑囚は規則で指定された物品しか居室に持ち込めず、分量は約120リットル分まで。他に1個当たり55リットルのコンテナ(プラスチック製ケース)を3個まで「領置品倉庫」に預けられる。倉庫内のコンテナはコンピューターで管理され、職員が端末に死刑囚の番号を打ち込むと、ベルトコンベヤーで自動的に運ばれてくる。金銭は居室に一切持ち込めず、国に預けた形になっている所持金の範囲内で、おやつや日用品を購入できる。
同拘置所は病院指定を受けており、医療設備は充実している。約10人の医師と約20人の看護師が所属し、CT(コンピューター断層撮影装置)やレントゲン、歯科治療用の機器も備えられている。