意外と「名君」クラウディウス

暴虐・淫乱の、絵に描いたような（って、絵に描いたけど）典型的な悪帝カリギュラの後をついだのは、アントニアの「バカ息子」クラウディウスです。

　カリギュラの父である「英雄」ゲルマニクスの弟ですから、叔父さんにあたるわけ。こんな人がいれば、どうしてカリギュラなんかに帝位がまわったのか・・・その経過は「孤島の皇帝」ティベリウスのところでも書きましたが、多分にクラウディウス本人に「ポイント」がある。

　彼は、「バカ」だと言われてい折るけれど、実は、血みどろの政争の真っ只中がいやで、酔いどれ芝居を打っていたかもしれない・・・。

　その策が功を奏して？親戚中から馬鹿にされていたおかげで、趣味の歴史の勉強に打ち込んでいられたけれど、カーテンの陰にかくれていたところを見つけられて、帝位に担ぎ上げられてしまった！　

　そして、みなの「期待」を裏切って、これが、まあ、ちゃんとうまいこと皇帝稼業をやったんですよ。

　しかし、彼の不幸は女を見る目がなかったことでしょう。メッサリーナには浮気をされまくって、面目丸つぶれ。海千山千の年増美人のアグリッピーナにてもなく「落とされ」て、とうとう毒を盛られて殺される。

　そして、結局、彼のあとを継いだのは、アグリッピーナの連れ子のネロ！

 

　野心満々の貴婦人アグリッピーナは、カリギュラの妹です。

　彼女は血筋がよいのに不幸であった？ので、クラウディウスと結婚することによって華やかな場所に出てきました。自分の手で勝ち取ったと思っているから、息子にも恩着せがましい。

　この母の指導？のもと、ネロもまた立派な「暴君」へと育ってゆきました。

　クラウディウスの実の息子であり、本来なら最も帝位にちかいはずのブリタニクスは、毒を盛られて殺されます。

　ネロの妻になっていた姉のオクタヴィアは、地味で大人しくてつつましやかな女だったので、ネロの気に入らず、ポッパエアと再婚したいがために、何の落ち度もないのに殺されます。

　しかもその死に方たるや、血管をひらかれ、血管が細かったのでなかなか死ねず、風呂場で湯気で蒸し殺されるなんて・想像しただけで痛いし熱いし苦しいよー！　セネカだって、たしか蒸し風呂で死んだのよ。血が出にくくて・・。ネロの怒りを受けて自殺を命じられたペトロニウスは血管を閉じたり開いたりしながら宴会しつつ、緩慢な自殺をしたらしい。

　こんな自殺が流行ってたのだ！

　このあとネロは母親と対立し、結局母まで殺して、残虐路線まっしぐら！　そして世にも有名な「暴君」へとつっぱしるのです。

　ネロの「暴君歴」は、親殺し（母）。兄弟殺し（ブリタニクス）。妻殺し（オクタヴィア。ポッパエア）。師殺し（セネカ）。妊娠していたポッパエアを蹴り殺したので、子殺しもつく？

　それに加えて、キリスト教徒を史上はじめて、最初に迫害したというオマケまでつきます（これがもう決定的に「暴虐のローマ皇帝」のイメージ作りましたね）。

　その行き着くところは破滅でしかありません。もちろん「自殺」です（でも、彼は根性なしだったので、さんざん近習に手をかけるけど・・）。かくして、ユリウス・クラウディウス朝の最後の皇帝となりました。

　しかし、ネロにとっての最大の不幸は、母がクラウデゥス家に入ったってことでしょうね。もし「皇子」にならなかったら、ただ単に音楽好きの貴族で終わっていたと思いません？少なくとも、キリスト教徒は迫害はしなかったでしょうね（Ｆ）。