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ローマ始祖伝説。血塗られた英雄
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滅亡のトロイから流浪の旅をしたアイネーアスから数えて14代目の王の2人の息子ヌミトルとアムリウスが争ったことから物語は始まります。
弟が兄を追放し、兄の子供たちを始末するなんてのは、よくある?話ですが、その追放された兄ヌミトルの娘レイア・シルヴィア姫をアムリウスは塔?に幽閉したのです。何故なら、彼女にもし子供が出来たら自分を殺しにくるから・・? ほかの男の子供みたいにさっさと始末すればいいのに、出来なかったのは、彼女が特別な女性、祭祀女王か神聖な巫女だったからではないでしょうか? つまり王権が手を出せない、聖なる処女だったのです。で、しっかり幽閉していたのに、彼女は妊娠して、双子が生まれるんだけど、厳重に見張られている女性をモノにするのは、普通の男ではできません。大体こういうことをするのは、ギリシャの昔から「神様」に決まっています。彼女のお相手も「神様」で、戦の神マルスです(ここで、愛の女神の血筋に戦いの神の血が入ったので、ローマ男が、女好きなうえに戦好きなのは当然か)。
はからずもマルスの子供を産んでしまった彼女は、テヴェレ川に沈められ(別説もある)、双子は殺される運命。でも、彼らも白雪姫のように、殺すに忍びない王の配下によって、木の槽に入れられてテヴェレ川に流されるんです。そして、無花果の枝にひっかっかっていたところを、雌狼に乳を与えられ、この光景を目撃した牧人に拾われる・・。そして、ロムルスとレムスは、牧畜者・・つまり古代のカウボーイとして育てられるんです。
やがて、成長した彼らはパラティウムの丘で放牧していたけれど、アウェンテヌスの丘の連中とモメた。で、「奴らを高く吊るせ」ってなことになって、直接対決をすると、なんと敵方のボスはおちぶれたヌミトル! そこで、今度は互いに手を結び、じいさん復位の挙兵をし、アムリウスを討ち果たして、母の仇を討ち、爺さんは王位を取り戻し、めでたしめでたし!
え、で、これで終わってはローマ建国はどうなるんじゃ? ってなもんで、もちろん、兄弟には、次の試練が待っている。
今度は、実力者なって国づくりを目指す兄弟の対立が起こる。兄はパラティウムの丘を「ローマ」にしようと言い、弟はアウェンテヌスを「レムラ」としたい。で、この対決は、ロムルスが作った「ローマ」の城壁をレムスが飛び越えたことに端を発して殺し合いになった。結局レムスが殺されて決着がつき、こうしてロムスルの町「ローマ」が生まれたのです。
こうして生まれた「ローマ」は、各国の亡命者(というとカッコいいが、要するにアウトロー)を受け入れたから、男ばかりが増えた。ロムルスはそんな国民の中からボス的な100人を選んで議員にしたらしい(もう相当なワルだけど、彼はまだ18歳なので、議員たって同年代の仲間でしょ)。これが元老院の起こりらしいけど、こういう連中が集まって何を協議したかというと、ズバリ、「女がほしい!」
かくして有名な、略奪結婚が起こるわけです。ローマの男たちは、祭にきたサビニの女たちを、人妻も、娘も、子持ちも、年増も関係なく、強引に妻にしてしまう。一方的に、女性を奪われたサビニの男たちは、軍備を整え、女たちを奪い返しにローマに攻め寄せる・・んだけど、ダヴィッドの絵を見ても、戦いを止める女たちが連れている子供が、皆相当大きい。こんなに育つまで、サビニ男たちは何をしてたんだ?
結局、ローマ人の妻となっている女たちの仲裁で、サビニとローマは和解をしますが、その「和解条項」の中に、サビニ側から「妻を大事にして楽をさせろ」という項目があったおかげで、ローマの女たちは家事をあまりしなかったとか・・。
その後、ロムルスはローマの王として君臨するわけですが、次第に独裁的な君主になっていったらしい。そして、ある日突然消えてしまった。そう、文字通り、消えてしまったのです。一説には、この国王消失劇には陰惨な事件があった・・つまり、ある日、元老院議員たちは、議事堂において、ロムルスを殺してしまった。そして、あきれたことにこの事件をなかったことにしようと決めたんです。そこで、邪魔になるのがロムルスの死体です。いかなるミステリー作家も考えつかなかった、死体消失のトリック! 100人全員が犯人である議員たちは、死体を100に切り分け、1人1かけらずつをトーガの襞にかくして、何食わぬ顔で帰っていった・・ってんだけど・・・・。まあ、神話ですから・・。(F)
※参考文献 「ローマ神話の発生」松田治(現代教養文庫)
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サビニ女の略奪
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カピトリーニ美術館にある、コルトーナの大作にもある「サビニ女の略奪」シーン。
でも、実はこんなセリフ、言ってたりして・・・。
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