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例年、きょうの社説は20歳へのメッセージを送ってきた。今年は新しい仲間を迎える大人社会の側に向けて書きたい。もちろん、自戒を込めて。新成人の世代は[記事全文]
安倍政権下で電力システム改革の議論が再スタートする。民主党政権のもと、学者らによる専門委員会が議論を重ね、昨年7月には家庭向け料金の段階的な自由化や発送電の分離などを盛[記事全文]
例年、きょうの社説は20歳へのメッセージを送ってきた。
今年は新しい仲間を迎える大人社会の側に向けて書きたい。もちろん、自戒を込めて。
新成人の世代は、あれこれとレッテルを貼られてきた。
薄っぺらい教科書で学んだ、勉強不足のゆとり世代。
内向き志向で、受け身。
そう決めつけずに、少し冷静に見つめ直してみよう。
全国大学生協連が毎年、2万人の学生を調査している。
大学生活の重点を「勉学」と答える率は、80年代や90年代よりかなり高くなっている。授業に出るコマ数も、90年代の前半よりずいぶん増えた。「まじめ化」の傾向がある、という。
「ゆとり批判に親や先生が焦り、むしろ勉強させられた」。新成人のひとりが言う。
ゆとり教育は、始まるやいなや学力向上にかじが切られた。大学も出席を厳しく取るようになった。言われるほどに、「ゆとり」の実感はない。
「内向き」はどうだろう。
一例に挙げられるのは海外留学が5年続けて減ったことだ。とはいえ、バブル期に比べると倍の6万人に増えた。
ボランティアの参加率は上の世代より低い。ただ、総務省の調査では、5年前と比べて率が最も伸びたのは20代前半だ。
新成人は、小さいころからケータイやパソコンがあった。
「だからリアルな人間関係が希薄になっている」とか、逆に「いつもケータイを気にして、友だち地獄に悩んでいる」とかとりざたされる。
しかし、生協連をはじめ各種の調査結果を見ると、どちらもそうは言えない。東京学芸大の浅野智彦准教授はそう語る。
大半は腹を割って話せる人がいるし、ケータイ依存が深まっているともとれない。つまり、世間の見方とデータの間にはギャップがある、という。
ivote(アイ・ヴォート)という学生団体がある。様々な大学から25人が集まり、20代の投票率を上げる活動をしている。
活動のひとつに、「居酒屋ivote」がある。国会や地方の議員を招いて、飲みながら議論する。「世代が違っても、目的意識が同じなら通じ合える。そう実感した」。20歳のメンバーが言っていた。
「若者を『問題』としてみようとする大人の視線が、むしろ問題かもしれない」と浅野准教授は指摘している。
私たち大人の側から世代の壁を築いてしまわないよう、胸に刻みたい。
安倍政権下で電力システム改革の議論が再スタートする。
民主党政権のもと、学者らによる専門委員会が議論を重ね、昨年7月には家庭向け料金の段階的な自由化や発送電の分離などを盛り込んだ基本方針案をまとめている。
政権は交代したが、茂木経済産業相も改革の方向性は共有する姿勢を示す。残る論点を速やかに詰め、通常国会に必要な法案を出すべきだ。
電力改革、とりわけ中立的で広域的な送電網を整備することは、安倍政権が力を入れる経済再生に大きく貢献する。
理由は明確だ。
電力ビジネスへの新規参入や斬新なアイデアの事業化を促し、経済を活性化するための基本的なインフラだからである。
新しい企業やサービス形態が生まれれば、雇用の創出につながる。競争が促進され、利用者の選択肢も増える。
総選挙時に「当面の最優先課題」と公約した自然エネルギーの導入にも不可欠だ。
送電網が広く開かれ、公正に運用されなければ、事業の見通しが立たず、思い切った投資にも踏み切りにくい。
問題は、電力会社が強く抵抗していることだ。
原発の安全点検や新しい基準への適合には時間がかかる。電力需給が逼迫(ひっぱく)する状況が続くなかで、送電部門が発電部門と分離され一体運用できなければ、安定供給に支障が出かねない――との理屈だ。
だが、需要にあわせて各電力会社が供給力を増やしていくビジネスモデルはもう限界だ。今後は燃料費に加え、安全投資や廃炉費用などもかさむ。
自前で新たな電源を整備するより、市場を通じて電力を売買する。価格メカニズムを働かせることで節電を促す。その方が供給力を確保できるし、効率化もはかれる。
以前はむずかしかった需要の制御も、ITの発達で克服できるようになった。世界の電力産業は、そうしたマネジメント力を競っている。
なにより多くの国民が3・11を機に、閉じられた世界で物事を決めてきた日本の電力システムの矛盾と不便さを実感した。後戻りはできない。
もちろん、一朝一夕にできる改革ではない。工程表を整え、不備があれば修正していく必要がある。目的とゴールをしっかりと示すことだ。
かつてのように電力会社の既得権益を守るような動きを見せるなら、自民党への期待はたちまちしぼむだろう。