【安倍新政権】進展見込まれるTPP交渉 まずは米国から情報収集 

2012.12.17 22:10

 安倍政権誕生で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をはじめとする経済連携交渉は、全体では進展するとの見方が有力だ。

 「米国側の日本に対する要請がどういうものか。よくみていかなければならない」。TPP交渉参加の判断に向けて、17日の記者会見で安倍氏はこう述べ、まず交渉の主導役を担う米国側から情報収集を進める考えを示した。

 「『聖域なき関税撤廃』という前提条件を突破できる交渉力があるかないか、それが問われている」。選挙戦でこう訴えた安倍氏の言葉には、したたかな外交戦術が透ける。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの内田俊宏エコノミストは「TPP交渉参加をちらつかせながら他の経済連携相手国を牽(けん)制(せい)でき、出方次第で、TPPを含む連携全体のメリットを最大化できる」と期待を寄せる。

 実際、日本をめぐる経済連携の進(しん)捗(ちょく)は、外交上の力学が強く働いている。

 現在交渉中、または交渉入りが見込まれる経済連携は、日中韓の自由貿易協定(FTA)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)など計7協定あるが、「日本が昨年にTPP交渉参加に向けた事前協議入りを表明したことで、中国などを経済協定に前向きにさせた」(通商筋)といわれる。

 最大の課題はTPPの党内意見集約だ。自民党は衆院選の公約で、明確なTPP賛成を封印。その結果、農村部などを支持基盤とする160人超の候補者が、TPP交渉参加反対を訴える農協(JA)系の政治団体から推薦を受け、当選した。党内にTPP慎重派を多数抱え込んだ形だ。

 TPP参加11カ国は来年中の交渉妥結を目指しており、日本に残された時間は少ない。新政権には緻密な外交戦略だけでなく、スピード感が求められるだけに、突破力も求められる。

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