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  東方災生変 作者:DHMO
再開しようかなと思って書き始めた結果がこれだよ! 十四歳神の法則は強烈過ぎたんだ!

てな訳で、IFルートです。まだ本編やってない所だけど。
もしアイツがアイツじゃなくてアレとしてアレしてたら……とかそんな感じ。
幕後劇
???:IF/太陽と直死
 風に揺らめく、黄色い向日葵達。
 鮮やかに魅せるその花びら。たおやかなその茎。どれをとっても、見る者の心に強く響く。
 生命と言う物がどれほど力強いのか。太陽と言う物がどれほど輝いているのか。
 真夏と言う物がどれほど過酷なのか。自然と言う物がどれほど残酷なのか。
 揺れる、揺れる、向日葵の花。しかしそれを見る者はいない。であれば、心に響かせるモノは無いも同然。
 生命は脆く。太陽は昏く輝き。
 真夏は優しく。自然は揺りかごの様。
 異常。しかしこれこそが、ここでの常であった。まるで、幸福な瞬間を切り取ったかの様な、優しい理が。

 その上空。澄み切った青空に、二つの影があった。
 場に渦巻く、おぞましい気配。闘気とでも表せば良いか、邪気と呼ぶのが適切か。心臓の弱い者で無くとも、思わずその鼓動を止めてしまいそうな程の圧迫感。
 両者共、ただ空にいるだけだ。どちらも刃を抜かず、口も開かず、ともすれば見ても聞いても味わっても嗅いでも感じてもいない。ただ相手がそこにいると言う事実に向けての想いがあった。
 片や、新緑の髪の女性。麗しいその顔には、ただ怒りが満ちていた。
 来るな。触れるな。穢すな。ここは私達の花畑だから。私達の世界に干渉するな。他人なんか必要無い。誰も此処には来るんじゃない。此処にあの刹那を残して置きたいから。輝きも美麗も帰らないから。帰れる様にしなければいけないから。だからここにお前の場所は無い。存在して良い理由も無い。ただ死ぬだけで良い。

 片や、白銀髪のモノ。境界の定まらないあやふやな輪郭だが、そこには殺意で満ちていた。
 殺したい。手折りたい。その刹那こそ破壊したい。幸せな日常は壊されるべきだから。不変の世界なんて邪魔でしかない。過去を残せばただ腐っていくだけだ。死を尊べ。死を認めろ。終着点であり通過点であり始発点である死を蔑ろにするな。死から逃げる為の停止なんて、愚かしいにも程がある。故に殺す。故に壊す。死してこそある生の輝きを知るがいい。

『故に滅びろ。勝つのは私だ』

 両者が叫ぶ。それは獣の咆哮の様であり、泣き叫ぶ乙女の様でもある。
 新緑と白銀――その闘いは、名乗りも見栄も無く、始まる。

『私の生を記す道標となれ』

 そう、私は記さなければいけない。私が私である理由はそれしか無い。
 生の瞬間にある輝きを/死の間際にある輝きを
 彼の為に/()の為に







 気が付けば、歪な槍が白銀を襲っていた。新緑にとって、数mであろうと数百mであろうと、間合いなんてあって無い様なものだ。瞬間の速さであれば、何者にも勝るだろう。
 一閃、あやふやな影絵を穿つ槍の切っ先。年輪の様な模様が施されたそれは、いとも容易く白銀を貫いていた。
 だがその程度の事では終わらない。寧ろ始まりですらない。白銀は貫かれた脇腹を自分で切り裂き、串刺しから抜け出す。迸る血の量は致命傷の証の筈だが、その様から消耗すら見られない。
 寧ろ、楽しんでいた。口元を釣り上げ、その目は歓喜に溢れていた。

「――■■(Yetzirah)

 溢れ出す血が形を成す。赤黒い蛇と針の様に細い剣は、紛れもなく白銀の命を貪って生まれている。
 禍々しいその様。だが、いやだからこそ力を感じる。それ自体が猛る命なのだから。
 血の牙を持った大蛇が、槍へ巻きつきそのまま新緑を呑み込もうとする。他愛もない、拘束とも言えないその代物。だがその数瞬であっても、二人の手数は幾十幾百となる。
 蛇の口へ拳をねじ込み、その顎を砕く。溢れ出す血飛沫をそのまま浴びながら、拘束されたままの槍を――『開いた』。
 そう、新緑が振るっていたものは、槍ではなく傘。布さえ張られる事が無くなり、その役目を敵の撃滅にされていたもの。新緑の魔技も相まって、単純に『傘を開く』動作であった筈のものでも、鋼鉄よりも硬い蛇の鱗を容易く八つ裂きにした。
 だが総ては予測されている。開ききったその瞬間、蛇が千切れ意識の空白に、新緑の肩に突き立つ細身の刃。レイピア、と言うには、その造形は歪曲し過ぎていた。まるで植物の根の様に、血の刃が蠢き肉体の内側から食い荒らす。数秒もしない内に、新緑の左腕が奇怪に波打ち、筋肉が破裂した。
 しかし、それはおかしい。何故新緑はそんな事をさせる間を作ったのか。これは純粋な殺し合いだ。それなら、礼儀も何も無しに滅し合うのが必然。刃を千切り捨てるのも、そもそも受けない事も可能だった筈。相手の攻撃を通してそのままなど、あってはいけない。
 では何故、新緑は左腕を犠牲にしたのか。簡単な事だ。そうすれば白銀を自身の近くに留めておけるから。

 白光が疾る。それは極大の雷。白銀の白を塗り潰す、白い輝き。
 蛇の残滓、剣の柄、曖昧な影、そんなものは残る訳が無い。総てを消し去る光は、雲すら飲み込み蒼天へと変える。
 稲妻は消え、蛇も、剣も、影も、あった筈のもの総てが無くなっていた。

 そう、そこにあるのは、いない筈であったその一柱のみ。先程までの児戯にも満たない、薄ぼんやりとした隠匿は無くなり、白い女のみがいた。
 振り乱す白髪は、退魔の銀を想わせる光沢を放つ。纏った白の着流しは、神聖さも想わせる。碧眼は清浄を表し、総ての不浄と総ての穢れを見破るだろう。であれば、これは善なる者か? ――否。
 単に、極まっただけだろう。極と極は通ずる。人と妖怪がまさしくそれだ。生きようとする人間は妖に迫り、妖怪は常に人に寄り添い人に近付く。神であろうと悪魔であろうと、対の極は同一。悪であろうと善であろうと、極まった先には、同じモノしか有り得ないのだ。
 陰陽を超えた極点を定義する言葉は無い。だがそれでも、敢えて――ある法則に則り敢えて言うなら、相応しい言葉がある。
 ――太極。本来の定義であれば掠りもしない。それを名乗るのは烏滸がましいにも程がある。だがこの神を表す言葉は、それ以外無い。
 これは悪。だが、それも極まれば善の極地へたどり着く。ただそれだけ。

 その様な存在を前にしても、新緑は微動だにしない。骨の見える腕もそのままに、ただ獲物のみを見つめていた。
 仮に神域に至ったとして、それが何だ。何の問題がある。あれか、厳然たる実力差さえあれば勝負は勝負として成り立たないとか、そんな事を思っているのか。ただ強いから弱者を勝れるとでも信じているのか。小細工は必要無いとか、男の王道がどうとか。なんて度し難い。これが何時勝負だと想っていたんだ。こんなものは害虫駆除と何ら変わらない。最初から互いが立つ土俵なんか存在していないし、有り得ない。殺される為に存在するものとなんか、最初から取り合わない。

「『幻想郷の開花』」

 故に。新緑は花開く。咲き乱れる花の為に、目の前の養分を吸い尽くそう。彼らの花畑を、永劫留めておきたいから。

「『直死の魔眼』」

 故に。白銀は見破る。自分の死を示す為に、目の前の過去を殺し尽くそう。()の新生を、ここで顕したいから。

 やはり両者が交わす言葉は無い。互いの必殺がぶつかり合い、そして――――――
どうして鉄生ファミリーには無間大紅蓮地獄をやりそうな奴ばっかりなのか。鉄生然り咲夜然り幽香然り。
……鉄生の夜刀ルートでも考えておくか!

さて、竜神と幽香のじゃれあいでした。必殺技あるとこーゆー文章は書きやすいと思う。けど思いつくのが既存のばっかりだからなぁ。
とりま、次回からは正規のルートでも書きます。それでは。


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