河北春秋
戦後最低の投票率となった先月の衆院選。若者向けの政策が各党ともあまりに手薄で、20代に愛想をつかされたという説がある。子育て支援が看板倒れだった前政権も罪深い▼若い世代に投資しない社会は廃れる。新政権は補正予算で若者の就労支援策を打ち出すというが、おざなりでは困る。人口減で、復興のゴールが遠い被災地ではなおさらだ
▼気仙沼市の青柳未来さん(20)は大震災の前日、高校を卒業し宮城県職員となった。助走の間もなく漁船調査に沿岸を駆け回った。「信じたくない光景だったけど、震災の現場で学んだことは多い。あれが私の第一歩」▼きょうは成人の日。バブル崩壊後に生まれたこの世代は、いじめや格差社会のふちを通り、大不況にも直面した。その果ての震災。せめて政治は働く意欲が持てる環境を整備するべきだ
▼未来さんは衆院選で初めて1票を投じた。「やりたいことはやっていくが、その代わり責任も果たさないと」。震災をかいくぐり、古里で働いた2年の日々は、かくも青年を成長させる▼101歳の内科医、日野原重明さんは若者と対論した著書の中で言う。「天職は今踏みしめている足元にその種がある。まず一歩を」。自らの全存在を懸けて社会に問うていくしかない。
2013年01月14日月曜日
|
|