社説

男女不平等社会/是正が日本再生の鍵握る

 無視できない二つの調査結果が相次いで発表された。内閣府の男女共同参画社会に関する世論調査と、ダボス会議を主催する「世界経済フォーラム(WEF)」の男女格差報告だ。
 どちらも残念な結果だった。
 内閣府の調査では「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という性別役割分業を支持する人の割合が初めて増加に転じ、20代の急増ぶりが際立った。
 価値観、選択はさまざまであっていい。ただ、目標に掲げてきたあるべき家庭の姿や望ましい社会像との隔たりは大きい。
 内閣府調査で「妻は家庭」に賛成したのは半数を超える51.6%。1992年の調査開始以来、減少を続け、前回09年は41.3%だった。今回はとりわけ、20代の伸びが著しく、30.7%から一気に50.0%に増え、30、40、50代をも上回った。
 若者に専業主婦志向が復活した背景を探ると、若者の保守化・内向きの傾向とともに、雇用環境の悪化や男女平等への改善が思うように進まない社会の現状が浮かび上がる。
 専業主婦でいられる女性も家庭を守ってもらえる男性も、もはや少数派。共働きは1千万世帯を突破し、専業主婦家庭を大きく上回る。かなわぬ現実があこがれの気持ちをかき立てる屈折した心理がのぞく。
 望めば仕事も家庭も手に入る「普通の社会」はまだ遠い。
 目指す社会が描かれ、雇用機会均等法が施行されて久しいが、男女の格差は縮まらない。
 WEFが政治、経済、健康、教育の4分野で男女平等の度合いを評価した12年版報告が裏付ける。日本は調査した135カ国中101位で、前年より「平等ランキング」の順位を落とした。先進8カ国では最下位だ。
 女性の企業幹部は極端に少なく、議員の割合も102位。昨年末の衆院選で当選した議員は38人で、前回の54人から3割も減った。順位はさらに下がる。
 不平等度の強さが女性の社会参画意欲をそいでいる面があり、大きな社会損失だ。
 経済を立て直すため、国際通貨基金(IMF)は「女性をもっと活躍させるべきだ」とするリポートを発表。ラガルド専務理事は「女性が日本を救う」と進言した。格差是正は課題の出生率上昇の一助にもなろう。
 女性が活躍している企業ほど業績は好調で、男性とは異なる視点が販売の革新や売れ筋商品の開発につながったケースが少なくない。多様性が高まることで組織運営が見直され、経営の効率化を引き寄せる。
 優秀な女性社員の積極登用に取り組む企業も増えてはいる。ただ、経営環境の厳しさを口実に、多くは二の足を踏む。トップの意志が進展を決定付ける。
 女性の自立心の高まりに加え、あらゆる分野で能力を発揮してもらう仕組みの整備を急ぎたい。政治や企業の役職に一定割合、女性を充てるよう義務付ける制度も検討していい。
 元気な女性が日本再生を左右する。ことしを本格的な男女平等社会に向けた元年にしよう。

2013年01月14日月曜日

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