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■特命調査班 〜マル調〜「生活保護費を流用か?その実態・・・」 2013/01/09 放送

 ここは、大阪市にある高齢者向けの賃貸住宅です。

 家賃は4万円で、ここに入居する130人のお年寄りのうち、およそ4割の人が生活保護を受給しています。

 部屋は10畳あり、なかなかきれいです。

 ただ病気で寝たきりの人なども多いため、自分で自分のお金を管理できない人も少なくありません。

 そうした場合、施設を運営する会社が、何にどれだけ使ったのかきっちりと明細を残すことになっています。

 しかし、まじめな業者だけではありません。

 今回「マル調」は、入居者の生活保護費を不正に流用している疑いがある業者の実態に迫りました。




 <介護会社の人>
 「今日は12月25日、何の日?」
 <入居者>
 「メリークリスマス」
 <介護会社の人>
 「そうそうそうそう、メリークリスマス」

 大阪市西成区にある高齢者向けの賃貸住宅。

 

 80室あり、65才以上の40人がヘルパーの助けを借りながら生活している。

 その8割は生活保護受給者だ。

 7年前に入居した宮村義満さん(72)。

 「大腸がん」などを患い、車椅子生活を送っている。

 毎月、受け取る生活保護費はおよそ12万円。

 入居後、賃貸住宅を所有・管理する会社と「金銭管理契約」を結び、保護費を管理してもらっているという。

 

 「金銭管理契約」とは、入居者が寝たきりなどで自ら金の管理ができない場合、管理会社と結ぶ契約だ。

 入居時、通帳やキャッシュカードなどを管理会社に預け、食費や光熱費などを代わりに支払ってもらい、管理会社は明細を入居者に報告する義務がある。

 だが去年5月、宮村さんが管理会社のA社に明細書を求めたところ、思わぬ答えが返ってきたという。

 <宮村義満さんの妻>
 「1か月これだけかかったから、どれだけ残った、という明細が何もなかった」
 <宮村義満さん>
 「『いついつのを見せてください』と言ったら、当然あるべきじゃないですか」
 <妻>
 「普通だったら1か月ごとにありますよね。それがないんです」


   去年6月、A社は賃貸住宅をB社に売却した。

 入居者はピーク時に比べ半減していたという。

 新しいオーナーの西井さん(仮名)。

 A社が管理していた入居者の通帳を見て、目を疑ったという。

 <B社の社長 西井さん(仮名)>
 「『大阪市生活保護、12万860円』と入っているんですよね、12月22日、去年ですね。西成区から入ってくる7,500円はオムツ代なんです。オムツ代と生活保護が入った段階で全額おろしている。こういう状態はあり得ないんです」

 これは、A社が管理していた入居者の通帳だ。

 

 大阪市から支給される生活保護費やオムツ代。

 それが毎月、支給されたその日のうちに、ほぼ全額引き出されているのが分かる。

 <B社の社長 西井さん(仮名)>
 「ここ入居している限り、こんなにたくさんお金はいらないんですよね。(B社に代わってからは)全員で3か月で200万ぐらいが余ってる。ということは、月に70万円ぐらいは余ってきているという形だと思います」
 宮村さんが受け取っていた生活保護費は、月およそ12万円。

 そこから、家賃4万2,000円。

 食費や管理費などで総額およそ10万5,000円が引き落とされるが、光熱費を差し引いても、月1万円は余るはずだという。

 だが、余ったお金がA社から宮村さんの手元に戻ってくることは、一度もなかったという。

 <宮村義満さん>
 「お金も一銭ももらってないしね」
 <妻>
 「石けん1つにしても、私が買ってるしね、全部」

 A社から一銭もお金を受け取っていないのは、宮村さんだけではない。

 <介護会社の人>
 「(当時、入居者は)たとえ100円のお金も出ないから。お風呂に入って『ヒゲソリ買うよ』といっても、そのヒゲソリの100円が買えないんです」

 A社の金銭管理に、問題はなかったのだろうか。

 「マル調」は、A社を監督する立場にある西成区役所を訪れた。

 すると2年前、立ち入り調査していたことが分かった。

 <保健福祉課 山内真一担当課長>
 「入居者とアパートが交わしている、金銭管理の同意書と出納資料をみせてもらった。同意書は全員の分揃っていて、出納状況については『赤字』のケースが多かったと聞いているんですけど」

 だが取材を進めると、A社が区役所に見せた明細書は虚偽の疑いが出てきたのだ。

 A社で金銭契約の明細書を作成していたという男性。

 社長の指示を受け、入居者の生活保護費が余ればウソの名目を使って、本人に渡していたことにしていたという。

 

 <虚偽の明細書を作成した男性>
 「この時点で例えば『10万円残りました』と言うと、残ったら困るから本人渡しとして『2万円ずつ入れてくれ』という指示があるわけです。つじつま合わせですね、通帳の残高とあうように」

 男性はこれ以上、明細書の虚偽作成はできないとして、去年、自ら会社を辞めた。

 <虚偽の明細書を作成した男性>
 「あの人のやり方にはついていけない、無理ですね。違法行為をする人とは一緒にはできないですからね」

 A社が賃貸住宅を売却した後、住宅の最上階には社長のコレクションが残されていた。

 <マル調>
 「施設の最上階には、前のオーナーが残していった金の観音像が置かれたままになっています」

 しかも観音像には、社長の名前が刻まれている。

 入居者の保護費は、こうしたものに流用されていたのだろうか。

 「マル調」は、A社の社長を直撃した。


 高齢者向け賃貸住宅の管理会社A社が、入居者の生活保護費を流用していた疑惑。

 <宮村義満さん>
 「お金は一銭ももらってないしね」

 取材を進めると、新たな問題が浮上してきた。

 食事提供サービス会社を営む清原さん(仮名)。

 A社が西成区で管理していた賃貸住宅にも食事を提供していたが、月額350万円の食事代金が支払われないようになり、去年3月、撤退したという。

 <清原さん(仮名)>
 「ちょっとシャレにならなかったですね。必ず入ってきてるお金があるのに、『なんでうちには入ってこないんですか?』と言う話をすると、『入居者さんからの入金がない。自分のところにも入金がなくて困ってるいるんだ』と」

 入居者から食費を含む生活保護費を全額受け取っているはずのA社。

 だが、業者への支払いが滞っていたのだ。

 一体、生活保護費はどこへ消えたのか。

 A社の社長を直撃することにした。

 たまたまA社の債権者が居合わせ、現場は怒号が飛び交った。

 <マル調>
 「毎日放送なんですが」
 「入居者のお金はどこに・・・」
 <債権者>
 「7月分の入居者の家賃はどうなってますか!」
 <A社の社長>
 「弁護士さんに頼んでます」
 <債権者>
 「家賃、払ってください!」

 <マル調>
 「不正は特にないってことですか?」
 <A社の社長>
 「ないです!」
 <マル調>
 「ちゃんと入居者の為にお金は使われているんですか?」
 <A社の社長>
 「やめてくださーい!!」

 その後も、生活保護費の不正流用疑惑について、社長に文書で取材を
申し込んだが回答はない。


 さらに、西成区がA社を立ち入り調査した際、虚偽の明細書が提出されていた疑惑について、区役所に確認すると、『当時の資料は一切残っていない』という。

 <マル調>
 「明細はどう確認してるのですか?」
 <保健福祉課 山内真一担当課長>
 「こちらの調査が詳細に渡ってできていなかったんだと思います。これを提出していたのであれば。場合によっては、貧困ビジネスと思われても仕方ない内容なので、この事業所がどうだったのかについて本庁と協議しながら、どういう対応が可能なのかを早急に協議していきたいと思います」

 

 213万人と過去最多となった生活保護受給者。

 中でも、65歳以上の高齢者や病気などで働けない人が7割を占めている。

 専門家は、こうした高齢者などの生活保護費をめぐる不正は、行政側のチェック体制が十分ではなく、表面化しにくいと指摘する。

 <たんぽぽ総合法律事務所 普門大輔弁護士>
 「ケースワーカーが不足しているので、そういったところに手が回らない、気付いても声をあげられないという環境があるのじゃないかと推測します。生活に困窮して住居を確保できない高齢者は、これからもどんどん増えていくと思いますので、法律や条例に則した『行政の監督機能の発揮』が求められてくると思います」

 西成区役所は、再びA社の調査に乗り出した。

 関係者によると、不正流用額は1,000万円以上に上るという。

 疑惑の全容解明は進むのだろうか。




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