アニメ背景とは?

 
「背景って何やってんの? うしろの景色もアニメーターが全部描いてるんじゃないの?」
 …とよくいわれたりするのですが、アニメーションの映像は様々な素材を組み合わせて撮影することによって皆さんがTVで見るような形になってゆきます。

 アニメを構成する素材としては、セル(原動画)、背景、3DCG、撮影CGエフェクト等が代表的でしょうか、基本的にはそれぞれの部分が分業された専門職となってます。

 で、背景描きの仕事とは「背景」の部分を作る仕事です(まんまやん!) 

 どんなものを描くのが仕事かといいますと、キャラクターの後ろにあるモノ、それは山だったり、ビルだったり、あるいは心象風景だったりします。 その作品の中の世界の自然、文化や歴史といった世界観、そして登場人物たちの暮らしぶりを決定付ける大事な部分です。

たとえばキャラのいるところがドコなのか、歴史や世界観を伝えます。

廃墟だったり

チベットの山奥だったり

なぞのクレーターだったり

23区内だったり

アメリカの片田舎だったり

縄文時代だったり


また景色ではなく、キャラの心情を色であらわしたり

なんかしあわせ?

おやじギャグでフリーズ?
内心怒ってます? 腹黒いこと考えています?

セルが同じでもかなり絵の持つ意味合いが変わって見えますよね。


 たとえば部屋をゴミだらけにするのか、ピシッと整理整頓されているようにするのか描き分けることによって、その部屋の主の性格をあらわすこともできます。




 アニメ背景の仕事は複数人での共同作業です。作品として絵柄を統一しなくてはいけないので自分の好きに描くというわけにはいきません。そこが個人で好きな風景画を描くのとは違うところでしょうか。アニメ背景の仕事では個性も大事ですが、それだけではなく他の人の絵を理解し、合わせられるセンスも必要です。

 それとやはり仕事ですので納期というものもあります。必然的に一枚にかけられる時間は限られてきますのでスピードも要求されます。仕事量としては作品の内容にもよりますがベテランになると一ヶ月100枚以上描いたりします。

 複数人で作業する上で作風を統一するために存在する背景の最高ポジションが「美術監督」です。 背景の色やデザイン等を決める大事な役目です。
 背景のお仕事では美術監督となることを目指してスキルを磨いていくことになります。

 背景描きとして歩んでいくステップはだいたい以下のようなカンジになるでしょうか。

通常の背景作業(簡単)

通常の背景作業(中難易度)

通常の背景作業(高難易度)

話数担当

美術監督補佐

美術監督


 日頃の身の回りのモノの観察
 いろんな人の絵描き方の観察
勉強することはてんこ盛りです。 背景のスキルを高めてゆくには、常にあらゆるものに興味を持ち続けることがとっても大事です。
 

 世間で言われている通り、アニメの仕事はかなり忍耐力のいる仕事ですし、新人入社時は賃金も低めです。ですので、業界への定着率はかなり低いのが現状です。アニメ背景業界も例外ではありません。多くの人は業界に入って1-2年で去っていきます。技術が身につく前に辞めてしまう人が多いのですね。
 しかし一度技術が身についてしまえば、それはとても大きな武器になります。実績を出せばより大きな仕事が任せてもらえますし、収入も増えてゆきます。 本人の努力量によるところが大きいのですが、まずは5年がんばればかなり変わるはずですよ。