天地創造、人類や生物の誕生、民族文化の起源、自然にまつわる逸話など、世界の各地でそれぞれに語り継がれてきた神話や伝説。古代の人々の豊かな想像力と民族の歴史が育んだ物語は、音楽や文学、ファッション、建築、デザインなど現代文化に多くのインスピレーションを与えてくれる、叡智の宝庫です。そして幸せを呼び込むといわれるラッキーモチーフにも、世界各地の神話や民話、創世記を綴った叙事詩などから生まれたものが少なくありません。そこには、古代の人々が家族や自分自身の幸せを祈る心が脈々と受け継がれています。そんな数々の神話や伝説とともに世界をめぐりながら、神秘的な古代の物語をご紹介します。
フィンランド各地で世界の創世記を竪琴に乗せて歌い継がれてきた口承民族叙事詩、カレワラ。この中で、広大な大気と海だけの原初の世界に一羽の美しい水鳥が飛来して黄金の卵と鉄の卵を産み、そこから世界が誕生したと語られています。フィンランドで"鳥の通り道"と呼ばれる天の川には、離ればなれにされた男女が星を集めて愛を成就させたというロマンティックな民話も。水鳥は、森と湖の国フィンランドで重要な信仰の対象だったといわれています。
聖書やギリシャ神話とともに西欧文化の源流とされるローマ神話は、文学や美術、音楽などさまざまな場面に浸透しています。そんな中でも日本人に馴染みが深いのが、美の女神ヴィーナスの息子、クピド(キューピッド)。背中に翼を持つ美しい少年で、魔法の矢を放つ気まぐれな愛の神様です。この矢で撃たれると、激しい恋心に支配されると伝えられています。恋愛成就のラッキーチャームとして、エンジェル、天使の羽、弓矢などのモチーフは人気を保っています。
先史時代から古代、中世にかけて西欧全域で中心的な役割を果たしたといわれるケルト民族の物語には、神秘的な伝説が多くあります。中でも英国ケルト地方の伝統工芸として知られるラブスプーンは、幸せを呼ぶお守りとして古くから伝わるラッキーモチーフ。1本の木から削り出された美しいスプーンに想いを込めて、戦場へ旅立つ男性が妻や恋人に永遠の愛の証として渡したといいます。幸運をすくいあげるお守りとして、今も英国で広く愛されています。
インド二大叙事詩のひとつである「マハーバーラタ」は、古代インドの宗教的、哲学的、神話的叙事詩。日本でも花まつりとして知られる4月8日は、釈迦国の王子ブッダ生誕の日とされています。マハーバーラタでは、ブッダの母マヤ妃は夢の中で小さな白い象の王が胎内に入ってくるのを見て身ごもったと語られ、仏教では特に神聖視されています。昔から日本では白蛇、ヒマラヤでは白い虎など、白い動物は神聖なるものや吉兆の象徴として各国で崇められています。
ハワイ語で"起源"を意味するクムリポは、王家に代々語り継がれてきた創世記。混沌とした暗闇の中から世界が生まれ、生物の誕生から神々や王族について語られた壮大な叙事詩です。この神話にも登場するホヌ(うみがめ)は、ハワイでは神秘的な力を持つ海の守り神、平和の象徴として崇められてきました。海辺で遊ぶ子供たちを鮫に襲われないよう守ってくれたという伝説や、四大神のひとりである海の神カナロアもホヌに姿を変えて現れたという神話も。
キリスト教やイスラム教が広まるはるか昔、古代エジプトの人々は自然や多くの神々を信仰していました。そこで語り継がれてきた神話に登場する、オシリス神とイシス神に捧げられたといわれる聖なる石、ターコイズ。成功をもたらすと信じられるこの石は、特殊な力を宿すとされ、旅の安全を守り、身代わりとなる護符としても知られています。世界で最古のジュエリーとされるエジプトのツエル女王の腕輪にも、黄金の台に大きなターコイズが細工されていました。
生物がいっせいに芽吹く、生命力に満ちた春は、世界中の神話や伝説、言い伝えなどでも、生命誕生や愛、幸せといったテーマで語られる逸話の多い季節。幸運をもたらすさまざまな春のラッキーモチーフをご紹介します。
許婚のいる姫イオに太陽神アポロが横恋慕しようとしたところ、女神ディアナがイオをすみれに変えて隠し、許婚と結ばれたというギリシャ神話からこの花言葉が生まれました。
幸福のシンボルとされると同時に、キリスト降臨の象徴ともいわれる春の花スズラン。フランスでは5月1日"ミュゲー(スズラン)の祭日"に、愛する人にこの花を贈る風習が。
好き、きらい、と花びらをちぎって恋の成就を願う恋占いの花。ギリシャ語で真実を意味するマルガリテーヌがその名の由来。古代のギリシャでは女神アルテミスに捧げる花とも。
ギリシャ神話で愛と美の女神アフロディテ誕生の時、大地の神々が生み出した花とされる薔薇。その美しい姿や香りから花の女王と讃えられ、多くの神話や伝説を残しています。
春に咲く白い花シロツメクサの名は、江戸時代にオランダからの輸入船で、ガラス製品の緩衝材として詰められたことに由来するとか。四つ葉のクローバーの花言葉は幸運。
英国で聖母マリアの遣いとされるテントウムシ。西欧では古くから、身体にとまると幸運をもたらすという言い伝えがありました。スウェーデンでは、女性の手にとまると"結婚が近い"といわれています。
西欧では神様の使者として願いを叶えてくれるモチーフとされるミツバチ。女王蜂を中心に大家族と巣を築きあげることから繁栄や幸せのシンボル、また蜂蜜を蓄える性質から金運上昇の象徴といういわれも。
美しさやチャンスが舞い込む、良い知らせをもたらすといわれる美しい蝶は、春を代表するラッキーモチーフのひとつ。オーストラリアの青い蝶ユリシスは、見ると幸せになれるとされる幸運の象徴。
生命が芽吹き大地がよみがえる春の象徴。春の到来を祝う復活祭では、卵に鮮やかな彩色を施す風習も。また世界中の神話や民話で語られる世界創世の逸話でも、卵から世界が生まれたとされています。
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