2012年5月10日(木)

“がれき受け入れ” 中学生が討論

放射能という、目に見えないものに対する不安に私たちはどう向き合うべきなのか。
子どもたちは、私たち大人以上に真剣に、深く考えているように見えました。
「被災地のがれきを受け入れるべきかどうか」について、生徒たちが具体的なケースに基づいて話し合う授業が東京都内の中学校で開かれました。
私もその授業に参加してきました。

“がれき受け入れ” 中学生はどう考える?

私が訪ねたのは、東京・杉並区の和田中学校です。
3年生150人が被災地のがれきの受け入れについて討論しました。
最初のテーマは、「あなたが自治体の責任者だとしたら、宮城・岩手県の『がれき』を受け入れますか」

グループごとに話し合って、ひとつの結論を導きます。

大越
「どういう結論になった?」

生徒
「受け入れないことになった」


大越
「みんなで話し合って?」

生徒
「受け入れる人もいたんですけど、反対意見の方が多かったので」

「かわいそうじゃん」

「47都道府県全部配布すればいんじゃない?」

「税金高くなるに決まってる」

「でもそこに置きっぱなしだと何も始まらないよ」

「もし東京に原子力発電所があったら、がれきとか受け入れて下さいといって、受け入れませんと言われたらかわいそうじゃない?」

「金がかかるよ。できるできないの問題でしょ。やりたいやりたくないじゃなくて。」

「できるできないでなくて、できるからやってるんでしょ。」

本音をぶつけ合う生徒たち。
すべてのグループの意見を集約すると。

校長先生
「青が『受け入れる』、赤が『受け入れない』で、91%が『受け入れる』」

9割以上ががれきを受け入れるとしました。

核心:「助け合いの気持ちの先に」

大越
「9割がたは、受け入れたいというのは個人的にはなんですけど、これから議論を通じていろいろな意見をまとめる側になったときに、考えがどう変わっていくのか」

授業の途中、校長先生が私に意見を求めました。
私は一枚の地図を見せました。
東京電力福島第一原発を中心に円が描かれた地図です。

大越
「実は和田中って(被災した)岩手県釜石市と同じ所にあるんです。 福島原発から見ると。
でも例えば、釜石の1つ北の宮古という人から見ると、僕らのほうが皆さんより福島第一原発より遠い所にあるんですよと言うことになるんですね。皆さん福島第一原発より、僕らのより近いところにあるのに僕らのがれきが汚染されている、だから受け入れたくないという風な意見が耳に入ってくると、彼らはやはりものすごく傷つくと思うんです。」

このあと、最後の討論が始まりました。
新たに加わった条件は、「住民アンケートの結果」。
6割が「受け入れに反対」だったとき、自治体の責任者としてどう判断するか。難しい問題です。

生徒
「害がないと分かっているなら受け入れてもいいけど…」

「住民が反対の方がいいと答えたのだから住民優先で考えるべき」

「反対多数」の結果を前に、子どもたちの意見は揺れました。

「受け入れ推進する人」

「はい」

「しない人」

「はい」

このグループは、「受け入れ反対」が多数を占めました。

「ガレキを実物で、生で見ていないから信用しきれない」

「誰かが何かを始めないと何も始まらないから。できることは絶対ある。」

受け入れに賛成したい、こちらの女子生徒。
反対する仲間たちに懸命に訴えました。

「賛成票の方が良いこと言っているんですよ。」

「そうだよ、そうだけど。気持ちがいいじゃん、良いことしたなって。」

しかし、仲間の意見はなかなか覆りません。そして。
最終的に、仲間の意見を聞き入れ、グループとして「反対」を表明することにしました。
全体の意見を集約した結果は、受け入れ賛成が20、反対が、16。
反対のグループが半数近くまで増えました。

生徒
「自分だけでも賛成という気持ちを強く持っていれば、反対の人も賛成になるかと思ったので賛成したんだけど、みんな反対ということでもう1回話し合ってさっきのような結論になりました」

「ずっと反対意見、がれきを受け入れないということだったが、きょう受け入れてもいいと少し感じた」

「反対にも意見があるというのがわかったし、理由がちゃんとあるということも分かったので、話し合いの場を設けてしっかり意見をひとつにまとめた方がいいと思った」

杉並区立和田中学校 代田昭久校長
「もう10年先のことを考えると大人も必要だけれど子どもの方がよりリアリティのある対策ではないかと。
自分の中で考え行動していく。こういう力がこれからの日本の復興のためにはすごく必要なんじゃないかなと思います。」


「被災地のがれきは、2250万トンあまりに上ると見られていて、いまもまだ、全体の12%しか処理が終わっていないということなんです。」

「もし自分が自治体の長で、そこでは6割の住民が反対しているとなると、現実の判断として、受け入れは難しいと考える生徒が増えていましたが、そもそもは、がれきを受け入れるべきだと答えた生徒が9割いたのが、私は心強く感じました。
助け合いの心をまず持つこと。
そこから具体的な問題をどう解決していくか、生徒たちは、感情に流されることなく、しっかり周りの意見を聞きながら考えを深めている様子でした。
私たち大人もお手本にしたいものです。」

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