河北抄
福島県中通りに住む知人から、ことしは年賀状が来なかった。欠礼のあいさつもなかったので、周辺に尋ねてみると、本人も家族も至って元気だという。 電話したら、経営する幼稚園の除染に神経をすり減らす一年で、年賀状どころではなかったとわびられた。
福島第1原発の事故後、外で遊べない園児の表情が険しくなり、ささいなことでけんかをするようになったという。先生たちは未経験の事態を前に、右往左往するばかり。日の光を浴び頬に風を感じてこそ、子どもの心は健全に育つのだろう。 園舎を丸洗いし、園庭の土を入れ替えた。裏山の落ち葉を二度取り除いたら、敷地内の空間線量は除染前の数分の一の毎時0.1マイクロシーベルトまで低下した。
やればできる。これで子どもたちを外で遊ばせられると園の通信に書いたところ、保護者の反応は二つに割れた。「1日1時間くらいなら外で遊ばせたい」「屋外には絶対に出さないでほしい」 「原発の再稼働に前のめりになる前に、考えてほしい。特に、子どもたちの将来についてだね」。知人の年賀代わりの願いを、もっともなことだと聞いた。(2013・1・11)
2013年01月11日金曜日
|
|