企業を信用しなくなった若い世代は組織で働くことを忌避し、日々の仕事に汗する勤め人を「社畜」と馬鹿にする。しかし、人材コンサルタントの常見陽平氏はあえて今、自分が主役でないことを受け入れた上で強い社畜になることが、厳しい時代を勝ち残る術だと喝破する。
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実は強い社畜こそ変化の激しい現代を生き残る可能性が最も高い生き方だが、そうなるのは簡単ではない。
私はよく「会社や社会は普通の人で動いている」と話す。「自分は特別な存在ではない」と認識し、脇役たる自分を認めることが強い社畜への第一歩となる。特に若手のうちは、会社の中でやらされる“普通の仕事”に成長のためのヒントが数多くある。能動的に動けば、その中に学ぶチャンスが随所にある。
例えば「コピー取り」がそうだ。「会議があるから××部コピーしておいて」と上司に言われた時、その資料がどんな会議で使われ、誰が参加し、何がそこで決められるのかで、コピーの取り方は変わってくる。
顧客が見るならカラーがいいのではないか、比較検討する資料ならステープルよりもクリップで綴じたほうがいいのではないか、など工夫の余地はいくらでもある。「見る人はどう思うか」をとことん考えるのはプレゼンテーションの基本である。私はこうした仕事を「創造的ルーチンワーク」と呼んでいる。
皆が嫌がる宴会芸だってバカにしたものではない。私は以前、所属した会社でたくさん宴会芸をやらされた。その宴会には課長までしか参加しないのか、役員がいるのかで笑いの取れる芸は変わってくる。若手のうちは自分より年上の人間が社会の大半を占める。年長者の好みを知ることは人脈作りの基本だ。
また、そこで活躍することで人脈も作れる。社内で異動希望先の上司が私の宴会芸を見ていたおかげで、私の存在が「なかなか面白い奴」と認識されるきっかけとなり、異動が決まったこともあった。
歓送迎会やお花見の幹事を任された時は、チャンスと考える。限られたコストで、誰が主賓かをわきまえた上で、みんなを喜ばせることを考える。会場やプログラムについてあらかじめ主要な参加者の了承を取る根回しも必要だろう。課題をクリアしてエンドユーザーや取引先を喜ばせるためのトレーニングになる。これぞ顧客志向ではないか。
こうした仕事で「失敗が許される」のは若手の特権だ。失敗を許容されつつ成長するための訓練を積めるのだ。
上司と飲みに行くことを嫌がる人は多いが、頼りにされて嫌な上司はいない。飲みに行って相談をした翌朝は、一番にお礼を言いに行く。その後、その件がどう推移したかを報告すればなおよい。
情報を受け取る人の気持ちを考えること、人脈を構築する方法、根回しの重要性、目上の人に可愛がられるにはどうすればいいか社畜として学べることはたくさんある。
※SAPIO2013年2月号
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