科学者は“フクシマ”から何を学ぶのか1月12日 22時45分
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、「科学者は“フクシマ”から何を学ぶのか」と題した公開シンポジウムが東京で開かれ、専門家の在り方などを巡って議論が交わされました。
このシンポジウムは日本学術会議の分科会が開いたもので、会場には120人余りが集まりました。
シンポジウムでは、6人の大学教授が人文・社会科学の観点などから、それぞれの意見を述べました。
“安全規制の2つの失敗”
このうち、東京大学の城山英明教授は、10年余り前から、地震や津波の専門家たちの間では津波の予測が確実とは言い切れず、防波堤などの対策に限界があることが主張されるようになっていたが、そのことが原子力安全の専門家たちの間には感覚として伝わっていなかったと述べました。
また、原発に関する津波の危険性の評価について土木学会に委託していたのは、国ではなく電力業界だったと指摘しました。
つまり、事故以前の安全規制は「異なる専門分野の間のコミュニケーション(=地震・津波の専門家と原子力安全の専門家の意思疎通)」と「民間事業者による自主的な対応(=電力業界による対応)」の2つで“失敗”があり、結果として対策が遅れたというのです。
“政府や市民と連携を”
一方、日本学術会議の前の会長で、専修大学の広渡清吾教授は、学術会議自体について、事故のあと政府から具体的な諮問が全くなかったことや、市民が抱える不安への対応など国民に対する責務が果たせていないという指摘があったことが問題だと述べました。
そのうえで、政府との信頼関係の形成や市民との連携が課題になっており、原発事故を教訓に、科学者の在り方などを考えるべきだと指摘しました。
“調査ではなく支援を”
会場では、科学と社会の関わり方などを巡って、出席者たちが議論を交わしました。
福島で復興の支援に当たっている福島大学の山川充夫学長特別補佐も意見を述べ「原発事故は地域が抱えていた問題を表に出した。地域の人たちにとっては、除染が終わればそれで済むのではなく、社会基盤の整備をはじめ、教育・文化なども大きく関わっている。研究者は、福島を調査の材料と捉えず、支援のフィールドとして考え、研究結果はまず地域の人たちに説明してほしい」と指摘していました。
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