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隣国の肖像<4>脱「ロビー」 冷戦後の政治交流は 2005.01.23
17.7
「韓国の政治はいまダイナミックに動いている分、不安定さを常に抱えている」と話す李成権さん
 ■日韓国交正常化40周年■
 昨年十二月初め、日韓議員連盟主催の日韓国交正常化四十周年記念フォーラムがソウルで開かれた。日本からは河野太郎(自民)近藤昭一(民主)ら、韓国側からも与党ウリ党、野党ハンナラ党から若手議員を中心に参加した。が、日韓関係の展望に関する議論は最後までかみ合わなかった。
 「サッカー・ワールドカップ(W杯)以来進んだ、両国の交流を基に、歴史問題を超えてまず関係を深めることが大事」
 交流拡大で溝を埋めようと呼び掛ける日本側に対し、その前提として日韓の歴史共同研究や在日外国人の参政権問題に議論の重心を置く韓国側。双方穏やかな語り口ながら、むしろ対立の印象すら残したほどだ。
 「韓国では、昨年四月の総選挙で386世代と呼ばれる三十代から四十代前半の議員が多くを占め、北朝鮮や米国に対する見方などで日本と大きな差異が生まれた。まるで二つの国の家庭用電圧が百ボルトと二百二十ボルトと異なるように」
 やはり昨年の総選挙で初当選し、フォーラムにも参加した李成権(イソンクオン)(36)=ハンナラ党=は、背景をそう解説する。
 ■仮面をかぶり
 李は二〇〇〇年、国会議員の秘書を辞めて日本に留学。河野太郎事務所で秘書として働きながら早稲田大大学院を修了した。日本では居酒屋のアルバイトも経験した知日派議員の一人だ。
 釜山大時代は学生運動のリーダーを務めながら、親北朝鮮色が強い進歩派政治家とは一線を画してきた李。政界では「新右派」と呼ばれるバランスの取れた立場の李の目にも、前世代の日韓議連は「冷戦の産物」であり旧時代の遺物に映る。
 一九七二年に発足した日韓議連(韓国では韓日議連)は、日本は竹下登ら自民党の大物政治家、韓国側からも金鍾泌(キムジヨンピル)ら古い世代の政治家が会長を務め、双方の会話は日本語で行われてきた。
 日韓の企業間の橋渡し役などを行う「ロビー外交」に関し、ときに政治資金疑惑などの癒着も指摘された。二つの国の議員らをつなげた紐帯(ちゆうたい)は「反共」であり、互いに歴史認識問題については「仮面」をかぶった。しかし冷戦は終わった。
 ■共有の価値観
 「日韓議連は外交の下支えや、日本からの基盤整備資金導入などで役割を果たしてきた」と韓国中央大教授の金浩燮(キムホソプ)は言う。だが、韓国内では六五年の日韓基本条約関連の外交文書公開をきっかけに、独裁政権時代の外交、日韓関係全般を否定する声が拡大。ウリ党議員らがこれを主導する動きを見せている。
 日韓の議員間交流は厳しい局面を迎えている。韓国側は歴史認識問題で「過去史清算」を掲げて日本に厳しい視線を向け、北朝鮮の核や拉致問題の対応でも両者の溝は深まったようにも見える。
 袋小路に陥りかねない事態を打開するカギについて、李は両国が共有する民主主義と市場経済の価値観についての再確認の必要性を挙げる。具体的には、北朝鮮問題での連携をきちんと保つこと、さらに世界の有力市場のうち、唯一ブロック化していない東アジアを共同市場化するために、日韓の政治家が協力することだと強調する。
 日本の政治家には「歴代首相が行った過去への謝罪をまたやれとは言わない。最低限『妄言』に気をつけてほしい」と言う李。個別の議員の信頼を基に、ネットワーク化した顔の見える日韓の政治関係をつくり直す。日本をよく知る李の提言だ。 (敬称略)
 
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