うぅ~ん……本来なら二話に分けるべき本編を一話に纏めました。どうしても、『アレ』だけは阻止したいので。
第五十二話 五十二式対物狙撃銃
インダストリアル・アイランド 北西300キロの空域
織斑(千夏)
「落ちろぉぉ!!」
アグレッサー部隊隊長にして『真紅の戦姫』の異名を持つ織斑千夏大佐が搭乗するVFMW-MSX108『プロセルピナ』は、左手に構えた五十一式630mm高出力長距離ビームキャノン砲『グングニール』を発射、その射線にいたUFOや浮遊砲台を撃墜させる。直撃で無くとも、ビームが掠れただけでも装甲が溶解し爆散してしまった。
織斑(千夏)
「凄い……圧倒的な火力じゃないか」
改めて天才技術将官が設計し生み出した後期型ミレニアムシリーズは、恐ろしく殺人的なまでの速度、先鋭的な火力、そして総合的な性能で群を抜いていた。
一方、機体が被弾し第六十二番島『師走島』に不時着した、織斑零夏少佐が搭乗する真紅のVFMW-008『ブラスター・ファントム』と東雲鳳姫大尉が搭乗するマリンブルーのVFMW-009『ドラグーン・ファントム』は、不時着した衝撃で電気系統が各部で切断・ショートしてしまい、機体が一切の反応を見せない。
そんな中で、彼女の機体の周囲をホバー戦車部隊が主砲を向け包囲していた。
織斑(零夏)
「クッ。ここで死ねるものですか」
零夏は、コックピット内部に常備されていた二十八式拳銃を取り出し、20発入りの弾倉を入れセーフティロックを外す。
鳳姫も二十八式拳銃に弾倉を入れ、セーフティロックを外して発射態勢を整える。
その時、外から奇妙な音と共にハッチが引き剥がされ、外からこちらを覗くのは普通の人間では無い何物かであった。
近衛機械兵A
「降伏せよ、女性でも最低限の権利は保証される」
織斑(零夏)
「断る!!」
そう言うのと同時に、拳銃でロボットの単眼レンズを撃ち抜き、その衝撃で近衛機械兵が転がり落ちる。
織斑(零夏)
「ガハッ――!!クッ……」
その瞬間、別の機械兵から何かが放たれると、真っ直ぐ零夏の腹部に命中し、思わず悶絶してしまう。
機械兵A
「だから降伏せよといったのに」
そう吐き捨てると、零夏をコックピットの中から無理矢理引き連れる。その横でも、鳳姫が引き連れられ、2人は押し込められるように1輌のホバー戦車に収容されてしまう。
だが、誰も知らなかった。愛妹を大切にしたい千夏の独断で、零夏のパイロットスーツに発信機が取りつけられている事を――。
拉致されてしまったのと同時に、同島の迎撃施設では決死の抵抗を強いられていた。625mm三連装陽電磁粒子砲砲塔12基、510mm三連装陽電磁粒子砲砲塔12基、510mm連装電磁投射砲砲塔14基等の要塞砲を基幹として、速射砲や地対空・地対艦ミサイル、対空機関砲が島の彼方此方に配置されており、数・質と共にトップクラスの防衛施設と、それを支える兵員・防衛隊・陸戦隊も精鋭揃いであるため、善戦している方に入る。
海軍陸戦隊隊員A
「何て数だ!!」
海軍陸戦隊隊員B
「ロボットなんて聞いていないぞ!!」
トーチカにて二十七式汎用機関銃や二十七式歩兵突撃銃で迎撃する海軍陸戦隊隊員。機銃弾が命中しても装甲によって弾かれてしまう。
防衛隊隊員A
「ならば、こいつでもくらい上がれ!!」
そう言いながら取りだしたのは、巨大な銃であった。
五十二式対物狙撃銃――性能諸元――
全長
・2400mm
銃全長
・1220mm
口径
・14.5mm
重量
・12.9kg
ライフリング
・6条右回り
使用弾薬
・14.5×125mmVFNG弾
作動方式
・ガスオペレーション・ロータリーボルトロック方式
発射速度
・32発/分
銃口初速
・870m/s
射程距離
・2000メートル
装弾数
・10発入り箱型弾倉
・15発入り湾曲型弾倉
OP
・狙撃眼鏡
・45mm連装グレネードバレル
説明
夢幻艦隊陸戦隊初の対物狙撃銃であり、外見はアメリカ陸軍のXM500対物ライフルをベースに、肉薄できる所を削った事で重量が軽量化され、運用が多少楽になっている。
銃弾は装甲物を確実に破壊するために、炸裂弾、焼夷弾、徹甲弾を始めとして破壊力のある炸裂榴弾や劣化ウラン弾を運用できるため、狙い次第では歩兵戦闘車や相輪装甲車を破壊する事が出来る。
使用する口径弾は14.5mmと、歩兵用弾の中では一番の破壊力を持っており、仮に歩兵に使用したら撃った本人が思わず発狂してしまう事態になるため、歩兵には使用しないのが暗黙のルールとなっている。
防衛隊隊員A
「受けろよ、劣化ウラン弾!!」
そう言いながら引き金を引くと、鈍く且つ重い衝撃が伝わる。14.5mm弾使用なら当然の事だが、その衝撃と共に劣化ウラン弾が機械兵に命中すると、一瞬のうちに内部を破壊し外側に飛び出すと同時に機械兵が爆発する。
ちなみに、夢幻艦隊では劣化ウラン弾を始めとする核兵器とそれに関する兵器の使用は、緊急時を除いて通常は封印されているが、この場合は全体の危機であるため劣化ウラン弾が使用できる。
海軍陸戦隊隊員A
「凄いな。一瞬のうちに」
海軍陸戦隊隊員B
「負けていられるか!!」
そう言うと、近接信管付きの対戦車ミサイルを発射する。ミサイル自体は、周囲にいる機械兵を探知すると、ミサイルが爆発し周囲にいた機械兵を巻き込み、機械の破片を周囲に散らかす。
劣化ウラン弾や燃料気化爆弾等、高威力や広範囲兵器によって、各地の防衛線は立ち直しつつある状態にある。
織斑(千夏)
「む?あれは……零夏の『ブラスター・ファントム』と鳳姫の『ドラグーン・ファントム』ではないか」
探知機を辿った途中、2人が搭乗しているはずの機動兵器が、まるで破棄されているかのように『師走島』に大破した状態で横たわっているのだ。
織斑(千夏)
「なぜだ……ま、まさか!?」
まさかと思い探知機を見ると、本来ならそこ(機動兵器)にいるはずの点(彼女)が動いているのだ。
その瞬間、千夏の表情が青ざめた。
織斑(千夏)
(誘拐……私の大切な零夏が……誘拐)「この……ふざけるなぁぁぁぁ!!!!」
最悪の展開に、千夏の中で何かが吹っ切れた。それと同時に、『プロセルピナ』に変化が現れた。
まず、コックピットのモニターに『Valkyrie system start up』(ヴァルキュリアシステム発動)と言う文字が出現すると、機体表面装甲がより真紅に染まり、背中の主翼が大きく展開する。
この様子に、UFO、ホバー戦車、多脚戦車が『プロセルピナ』に接近するが、一瞬、何かが通り過ぎた瞬間に爆散する。
その両手には五十一式22.55メートル超大型ビームブレード『デュランダル』が握られており、周囲にいた機動兵器のパイロットのみならず、誰もが唖然としていた。
とてもではないが、機動兵器では成し得ない瞬発力、機動力を『プロセルピナ』とそれを操縦する千夏はやり遂げたのだ。
そして、千夏の大切な愛妹――零夏とその幼馴染である鳳姫を助けるべく、圧倒的なブーストを噴射してそこにへと翔ける。
その目標は――すぐに見つかった。他の戦車部隊はこちらに向かうのに、あるホバー戦車は全く逆の方向に向かっているのだ。
織斑(千夏)
「見つけたぞ!!私の大切な零夏を返せぇぇぇ!!!!」
鬼神の如く向かってくる『プロセルピナ』に、周囲を護衛していたホバー戦車や多脚戦車が迎撃を行うが、驚異的な速度によって全く命中する事無く、逆に両手に持ち替えた二十五式155mm大型ビームライフル『ノイエ・オルクスガイスト』で周囲の護衛戦車を破壊させ、残ったホバー戦車に対して急接近したの後、右手の下部から四十一式腕部155mm高出力ショックアンカークラッシャー『パラリューゼ・ドルン』を射出し、ホバー戦車に巻き付けて捕獲する。
砲塔部とコンピューター類が集中している部分を破壊させると、そのまま大切に抱きかかえながらインダストリアル・アイランドへと機体を向かわせる。
千夏が救出する少し前、1輌のホバー戦車に零夏と鳳姫が閉じ込められ、2人はどこに連れて行かれるのか分からないまま、ただひたすら助けが来るのを願っていた。
織斑(零夏)
「ねぇ……私達、このままどうなるの?」
東雲(鳳姫)
「分からないが……少なくとも敵の拠点に向かっているの位しか分からないな」
手に手錠をかけられており、周囲にはライフルを持った機械兵が見張りをしていた。
織斑(零夏)
「助けて…千夏お姉ちゃん」
東雲(鳳姫)
「だ、大丈夫だって。きっと助けが来るはずだよ」
そんな時、1体の近衛機械兵が言う。
近衛機械兵A
「助けなんか期待するなよ。あの御方が手を下したら、お前らの戦力は数時間で全滅させる事が出来るのだからな」
近衛機械兵B
「そうそう。それを考えたらな、お前らは本当に運が良かったよ」
東雲(鳳姫)
「運が良かっただと……」
言っている事が分からず、聞き返す鳳姫。
近衛機械兵A
「そうだ。あの御方の目に止まっていなければ、お前らはあそこで死んでいた身だからな」
近衛機械兵B
「生きる代わりに、あの御方の一生の奴隷になるのだよ」
東雲(鳳姫)
「ふざけるな!!誰が奴隷になるものか!!」
織斑(零夏)
「そうですよ!!」
2人は当然の事を言い返した。一生の奴隷になる位なら、あそこで戦死していた方がよっぽど良かったと、パイロットとしての当然の事を言ったまでだ。
近衛機械兵A
「まぁ。精々強がっていなよ、お嬢さん方」
近衛機械兵B
「あの御方に掛かれば、そんな強がりも快楽によって忘れるよ」
そんな時、1体の機械兵がやって来た。
機械兵A
「報告します!機動兵器1機が接近中!こちらに向かって来ます!!」
近衛機械兵A
「何だと!?何故ばれたのだ!!」
近衛機械兵B
「迎撃は何をやっていたのだ!!」
機械兵B
「追加の報告です!!護衛戦車部隊全滅!!あれは……て、天使の形をした、あ、悪魔です!!」
追加の報告で、ようやく事態の重要さが分かった。
近衛機械兵A
「だからどうした!こちらには人質がいるのだぞ!」
近衛機械兵B
「そうだ!攻撃すれば、人質の命はない事くらいわかっているはずだ!」
普通に考えればそう思うだろう。普通に考えれば……。
次の瞬間、何かにぶつかったかのような衝撃が伝わり、後ろに引っ張られる感覚を覚える。2人は後ろが壁のため無事だったが、機械兵達は立ったまま且つライフルを手に持った状態なので、引っ張られる衝撃と共にバランスを崩し、衝撃と共に反対の壁に激突し、メインの部分をやられたのか動かなくなってしまったのだ。
織斑(零夏)
「な、何なの!?」
東雲(鳳姫)
「分からないが……攻撃なのかどうかすらハッキリしないからな」
少しパニックになっている零夏に対して、鳳姫は冷静的な判断をしていた。
そして今度は、軽い衝撃と共に揺れが収まり、さっきとは逆の方向に向かっているのだ。
東雲(鳳姫)
「さっきとは逆に向かっていると言う事は……」
織斑(零夏)
「助けが来たんだね!!よかったぁ~!!」
どこかの誰だかは知らないが、取り敢えず助けられた事に安心する2人であった。
次号へ。
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