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ドコモのアテ外れ「MVNO潰し」

「土管の親玉」が政治力で総務省の尻を叩いたが、政権交代が早まり仕切り直しに。

2013年1月号 BUSINESS

研究会が結論を急ぐ裏で、ドコモが暗躍していることは衆知の事実。実は日本通信との契約違反訴訟の旗色が悪い。両社間に合意はなかったとする主張が行き詰まり、電気料金の消費者約款のように、MNO側の都合で約款を一方的に変えられるという論理に転じている。

これは商法上も無理があるうえ、ドコモ経営企画部企画調整室の担当者が、メールで日本通信に対し「接続停止(一部)の事態も招きかねない」と警告、「優越的地位の濫用」との反発を招いた。当時の山田隆持ドコモ社長が遺憾とする文書を出したこともあり、方針転換して得意の政治力に頼ったのだ。やはり独占DNAは消えず、競争嫌悪症が顔を出した。

その前兆は11年から始まっている。同年8月号の本誌が報じたように、6月半ばにドコモは「相互接続の見直し」と「接続義務の柔軟化」の必要性を説き、MVNO見直しを求めるパブリックコメントを総務省情報通信審議会(情通審)に提出している。同省の競争促進派が定めた「MVNO事業化ガイドライン」が、欧米に比べオペレーターに厳しすぎるとの論理だった。

09年の政権交代で民主党政権が誕生し、ドコモの天敵、ソフトバンクモバイルの孫正義社長が「政界風見鶏」の原口一博総務相(当時)に吹き込んで「光の道」構想が浮上した10年当時、ドコモは押さえこみに懸命で、民主党の有力支持母体、全電通も動員したほどだ。

5カ月で滑り込みの目算

ところが、3・11の東日本大震災後、孫社長がメガソーラーに走って「光の道」の脅威が薄れると、今度は「孫の居ぬ間の洗濯」にMVNO潰しを画策した。当時は米アップルやグーグルなどの攻勢で、日本の通信事業者が「土管化」し「6500億円の収益減になる」と黒船脅威論をあおったのである。

そして消費税増税を強行した野田政権の余命がいくばくもなくなった12年秋、ドコモは総務省を再びプッシュしてMVNO潰しを急いだ。全電通カードが切れる民主党政権のうちに滑り込みでガイドライン改定を急いだのだ。傍証は二つある。

本来、情通審接続政策委員会に諮るべきなのに、それを避けてイエスマンを集められる基盤局長の私的研究会に諮ったこと。11年のMVNO見直しが審議会でヤリ玉にあがったからだ。しかも改定はMVNOガイドライン置き去りで、二種指定ガイドラインだけと歪んでいる。

もうひとつは研究会のスケジュール。12年10月23日に始まって13年3月中旬に報告書決定となっている。これだけ問題含みなのに、たった5カ月しか審議期間がない。さらにこの日程は、総選挙を4月以降と踏んでそこから逆算したとも見える。

政権交代前の駆け込み改定――そのもくろみが野田総理の「決断」で吹っ飛んだ。新総務相次第では一からやり直しか。今度は自民党にすり寄ってMVNO苛めに励むのか。

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