京大:「マシュマロゲル」開発 油流出事故に応用も
毎日新聞 2013年01月11日 19時38分(最終更新 01月11日 19時55分)
水ははじくが、油をよく吸収する新しい高分子物質「マシュマロゲル」を京都大の中西和樹准教授(無機材料化学)の研究グループが開発した。油の流出事故での回収作業や化学物質の精製などへの応用が期待できるという。ドイツの科学誌「アンゲバンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション」(速報版)に11日、論文が掲載された。
マシュマロゲルは、ケイ素を骨格とする有機化合物(シリコーン)の一種で、スポンジのような弾力がある。シリコーンの特性を研究する過程で、偶然、開発できたという。表面の分子構造や微細な凹凸の影響で、油などの有機物は吸着するが、水を強くはじく性質=撥水(はっすい)性=がある。シリコーンに酢酸や尿素、界面活性剤を加えてかき混ぜた後、数時間温めるだけで合成できるという。
97年のロシアタンカー「ナホトカ号」重油流出事故で、海岸に流れ着いた重油の回収は、ひしゃくなどですくう人海戦術に頼らざるを得ず、岩場での作業は困難を極めた。マシュマロゲルは、市販の薬品を使って合成でき、成形も自在。中西准教授は「現場に材料を持ち込み、地形や用途に応じてその場で作製することも可能ではないか」と話している。
また、分析化学や生命科学などの研究分野では、水と油を厳密に分離する技術が不可欠。マシュマロゲルは、300度以上の高温や液体窒素中でも機能を保つことから、グループはさまざまな研究に応用できるとみている。【五十嵐和大】