南極観測船:「しらせ」昭和基地沖への接岸断念
毎日新聞 2013年01月11日 20時27分(最終更新 01月12日 00時09分)
文部科学省は11日、昭和基地に向けて砕氷航行中だった南極観測船「しらせ」(全長138メートル、排水量1万2650トン)が、昭和基地沖への接岸を断念したと発表した。厚さ4〜5メートルの海氷と積雪に阻まれ、9日に昭和基地から北西に約18キロまで近づいたところで進めなくなった。しらせは昨年も接岸できなかった。2年連続の断念は初めてで、観測計画への影響は必至だ。
今後は、搭載ヘリコプターと雪上車を使って越冬に必要な食料や燃料、物資の輸送を続ける。しかし、本来2機体制の輸送用ヘリは1機が故障で搭載できなかった。輸送能力が限られるため、観測機材を含めて約1124トンの搬入を予定していた物資は、712トンまで絞り込む計画だ。
今季は基地周辺の日射が強く「氷上が水浸しの状態」(文科省)になっているため雪上車の走行は困難で、輸送できる物資は更に減る可能性もある。頼みの綱のヘリが不具合に見舞われれば物資輸送が途絶え、備蓄燃料なしの越冬や、越冬そのものの断念も現実味を帯びる。
しらせは、食料や燃料、観測機材などを運ぶため、昨年11月に日本を出航。オーストラリアで第54次南極地域観測隊員65人を乗せ、同12月に南極海域に到着した。国立極地研究所によると、近年、基地周辺海域は氷と雪が厚くなっている。昨年はヘリと雪上車で基地へ物資を運んだが、輸送量は当初計画の7割弱にとどまった。
本吉洋一・極地研副所長は「越冬がぎりぎりの状態が2年続くことは今までなかった。輸送物資は滞在に必要な燃料や食料に限り、大型の観測装置などの搬入はあきらめざるを得ない」と話している。【阿部周一】