名古屋グランパスを契約満了で退団するMF三都主アレサンドロ(35)のJ2栃木SCへの完全移籍が11日、両クラブから発表された。三都主は「ここでプレーしたことはボクの誇り」と3年半在籍した名古屋への感謝を表明。真摯(しんし)なサッカーへの姿勢で一目置かれていた三都主の遺産は、次代のタレントへ受け継がれる。
日本国籍を取得した選手の代表的存在として活躍を続けてきた35歳のサッカー人生は、まだまだ終わらない。栃木SCに新天地が決まり、三都主は「グランパスではうれしいこともつらいこともありましたが、忘れられない3年半でした。これからも向上していきたい」とコメントを発表した。
日本代表としてワールドカップ(W杯)に2大会連続で出場した三都主だが、09年のグランパス加入後は苦しんだ。故障の影響もあって全盛時のスピードが影を潜め、ベンチから試合を見つめる日々。昨季はJリーグで出場5試合のみ。退団決定後は引退も頭をよぎったという。
「家族は『もういいんじゃない』って言うんだよ。ボク自身、ブラジルへ帰ろうかなとも考えました」と明かす。
それでも、サッカーへの情熱は断ち難かった。「出た試合のプレーは悪くなかったと思っている。まだプレーできる」と三都主。プライドを捨て、プロアマ問わずオファーを待った。栃木SCでの年俸は昨季の年俸2000万円(推定)から激減するとみられるが、「お金の問題じゃない。必要とされる場所でサッカーがしたい」。
グランパスでの最後の公式戦をベンチ外から見つめた12月23日の天皇杯横浜M戦の試合後、三都主はロッカーで若手に語りかけた。「君たちにもいつかこういう日がくる。日々全力でプレーしてほしい。闘莉王にだって負けない気持ちでやれ」
控えという立場でも腐らず練習に打ち込む姿勢は、チーム内で尊敬を集めていた。ブラジル生まれの侍の魂は名古屋に息づいている。 (木村尚公)
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