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地方
進む円安 九電、コスト増の危機 1円安で燃料費50億円上昇
■為替効果食いつぶす
政権を奪回した自民党への期待から、マーケットで円安株高が進んでいる。日本経済を牽引する輸出産業はもろ手を挙げて歓迎するが、原発の長期停止に伴い原油やLNG(液化天然ガス)の輸入を続ける九州電力にとっては、1円でも円安になると燃料コストが増大し、経営危機がますます深刻になる。新政権による円安誘導策の効果を、原発停止による燃料費上昇が食いつぶしかねない状況だ。(小路克明)
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九電によると、1ドル79円を前提にしており、所有する原発が年平均で半分程度稼働していたとしても、円が1円安くなると燃料費は年間50億円増える。過去最悪の最終赤字3650億円を見込む平成24年度は原発稼働率はゼロの見通し。原発を再稼働せず円安が進むと、単純計算で数十億から百億円規模で赤字が見込みを上回ることになる。
燃料費増加の影響は、すでに顕著になっている。
門司税関が今月19日に公表した九州経済圏(山口、沖縄を含む9県)の貿易統計によると、輸出総額から輸入総額を差し引いた貿易収支は、今年11月で571億円の赤字。14カ月連続の貿易赤字となった。今年1~11月の貿易赤字累計は6762億円に達し、前年の5815億円を1千億円上回る水準だ。
反日運動の影響で、中国向け自動車輸出が大幅に落ち込んではいるものの、九州経済圏は中国、韓国、アメリカ、EUに対していずれも輸出超で、貿易黒字を確保している。ただ、サウジアラビアなど産油国からの原油輸入額が高止まりし、貿易赤字となっている。
九州の自動車や半導体メーカーが稼いだ金が、燃料費として中東に流出している状況だ。九州電力幹部は「円安は、九州の自動車や半導体産業にとっては追い風となり電力使用量も増える要素だが、わが社にとっては逆風となり悩ましい」と話す。
この状況は九州だけでなく全国に共通する。
財務省が発表した貿易統計速報によると、今年1~11月の貿易収支は、累計6・2兆円の赤字で、年間ベースで過去最大の赤字になることが確実な情勢だ。
円安は輸出産業を活性化するが、燃料費増加にも繋がる。原発が停止したままでは、日本経済を押し上げる効果は限定的になる。
政府の需給検証委員会に提出された資料によると、平成24年度に全国の電力会社が支払う燃料費は、全原発停止に伴って前年より3・2兆円増え、6・8兆円に達する。
みずほ総合研究所(東京)の経済調査部エコノミスト、徳田秀信氏は「全国の電力会社が購入する燃料は、ほとんどがドル建決済。おおざっぱに言えば、円安が10%進めば、燃料費も10%増えることになる」と分析する。原発ゼロのまま10%の円安になっても、全国の電力会社の燃料費は7・5兆円近くに膨らむ計算だ。
円安による燃料費増加は、いずれは電気料金に跳ね返り、企業の国際競争力を削ぐことになる。
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