お題:フニャフニャの国 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:1163字

続・子犬のような幼馴染
「中学校入ってからどんどん成長しちゃって、巧も大きくなったのかなーって思ってたけど。追い抜いちゃったね」

 男性のものとは思えないソプラノボイスで追撃を続ける李亜。もう黙ってくれ。

「……身長の話だよな?」

 165センチの自分より背の高い幼馴染の男の娘を見上げて巧は言った。

「うん? そうじゃないよ? ところで巧って大翔館中学に行って彼女できた?」

 やわらかく下ネタを否定することなく、李亜は話を続ける。

「いや、いないよ」

 複雑な表情で返事を返す巧。少し泣きそうになったけど気のせいだろう。

「えー、うそー。私は今の彼女で7人目なのに……ちょっと意外だね、昔は頼りになったのに」

 憐むような視線を向ける李亜。
 正直トップモデルなだけあって綺麗な顔立ちである。普段ならこんな美人を目の前にしたら気恥ずかしくて視線を外すだろうけど、なんだか言葉の端々から優越感を感じたため、せめてもの抵抗として目線を外さないことにした。正直しんどい。

「昔はいっつも私は巧の後ろに隠れてたよね」

 なつかしむようにつぶやく李亜。「今だったら俺がお前の長身に隠れるだろうなってやかましいわ」と心の中でつぶやく巧。

「でもね、中学校に入ってからどんどん背も伸びたし、修学旅行の時にみんなで大きさ比べしたらぶっちぎりで大きかったことで自信もついたんだ」

 見る者すべてを虜にしてしまうような笑顔ではにかむ李亜。「自信つけるかわりに第二次性徴捨ててきたんじゃねぇかってそんなことないでしょうね立派なドーベルマンをお持ちでってやかましいわ」と心の中が正常でない巧。

「巧も頑張ろうよ、そんなしょぼくれた顔してないでさ」

 用を足し終わったのか、ドーベルマンを上下に振りながら李亜が励ます。「しょぼくれた顔の原因はおたくのワンちゃんなんですがね、うちのチワワがすっかりおびえてしまっています、うんやかましいわ」と、心の中で比喩表現を使いこなす巧。

「それじゃ、私はもう帰るね。あ、私のメルアド知ってるよね。たまにはメールしてね」

 ジーンズのチャックを上げて、小便器から離れる。「なんで後ろ通るだけでいい香りがするんだよこのトップブリーダー」と、言い回しがさく裂する巧。

「そうだ。一人でやるのはほどほどにしなよ。フニャフニャの国のフニャフニャマンになっちゃうぞ」

「……なに言ってんだよ」

 もはや巧の気力は根底から削がれていた。

「はやく大人になってね、巧。私みたいに立派な、一皮むけた男にね」

 心底嬉しそうに、ハイヒールの靴音を鳴らして男子トイレから出る美人モデル。
 その後姿を見て、巧にいろいろと複雑な気持ちが混みあげてきた。

 ふと自分のチワワを見ると、何故か必死に自己主張していた。
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:日宮理李@ちょりお お題:フニャフニャの国 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:1059字
一風変わった王国があった。 そこには人が住んでいた。そんなの当たり前だとおそらくいろんな人が文句をたれるだろう。 しかし、そこに人がいるのは不自然なのだ。 そ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん お題:フニャフニャの国 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:408字
トンネルを抜けると、雪国だった。とは誰の言葉だったか。作者は思い出せないがその時の主人公の気持ちは十分に分かる。 なぜなら・・・ 俺が森から出ると、フニャフニ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まっどほーるPeace お題:フニャフニャの国 必須要素:うんち 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:377字
―色濃き茶に染まりし大地、其れフニャフニャの国なり。彼の地にあるは永遠の豊穣―「陸が見えるぞーーー!」 見張り台からの知らせに顔を上げると、青い海に茶色の陸地 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ばんなそかな お題:明日の音 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:630字
「明日は雨になるでしょう。」ラジオから聞こえてくるノイズ交じりの声に、僕はため息を返す。時計は22時、彼女からの返信はまだない。いつも自分の好きなように生きてき 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:柚木 アリス お題:明日の音 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:465字
僕は、今を一生懸命に生きる。それしか出来ないから。それ以外は出来ないから。1日1日を大切に…なんて思いながら、僕はダラダラと長期休暇を過ごしている。20XX年1 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
recognition ※未完
作者:まりも@メンヘラな学畜bot お題:明日の音 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:670字
ピチョン・・・ピチョン・・・水滴が岩を打つ音が響いている。たかだが水滴だ。周りに響きわたるほどの大きな音を奏でることはできない。しかし、彼女にとっては、「大きく 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:塩@ツイ減したい お題:明日の音 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:443字
日付が変わる前には蒲団に入る。どうしても眠くなってしまうのだから、仕様がない。そんな私を子供だなぁと笑う彼だって、夜更かしをした次の日は、大きな目をしょぼしょぼ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リャマ お題:明日の音 制限時間:15分 読者:36 人 文字数:627字
ウインターカップを終えて数週間は、本当に何もなかった。 黒子は幸せそうだったし、キセキのやつらも本当に憑き物が落ちたような顔で笑っていたから、ああこれであいつ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まっどほーるPeace お題:明日の音 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:156字
鐘の音が響く。「あー、もう今年も終わりかぁ」「……そうだね」 家にいたときは特段の感慨もなかったが、こうして年越しも近づいてくると、徐々に寂しさが湧いてくる。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:飛龍@大学生天原仕上げ中……! お題:思い出の子犬 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:760字
あれは・・・小さい頃の話。道端に小さな子犬が捨てられていた。栗色の綺麗な毛並みでとても可愛い。潤んだ瞳はいかにも「拾ってくれ」と言わんばかりに訴えていた。その当 〈続きを読む〉

まとの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:まと お題:フニャフニャの国 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:1163字
「中学校入ってからどんどん成長しちゃって、巧も大きくなったのかなーって思ってたけど。追い抜いちゃったね」 男性のものとは思えないソプラノボイスで追撃を続ける李亜 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まと お題:思い出の子犬 必須要素:いま話題のあの人 制限時間:15分 読者:27 人 文字数:885字
桜田李亜。いま話題の『男の娘』モデル。 15歳という年齢の割に170センチの上背と、端正な顔立ちに華奢な手足。均整のとれたプロポーションはまさにモデルになるた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:まと お題:自分の中のセリフ 必須要素: 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:887字
世の中には、言ってはいけない一言というものがある。 それは例えば、親が子どもに「あんたなんかうちの子じゃない」と言ってしまうものだったり、告白されたときに喜び 〈続きを読む〉