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薬のネット販売 事実上解禁・反応は
1月11日 18時44分

薬のネット販売 事実上解禁・反応は
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インターネットを使った薬の販売について、最高裁判所はネットでの販売を一律に禁止した国の規制は無効だという判決を言い渡しました。
薬のネット販売は事実上解禁されることになり、国は新たな規制が必要かどうか検討を迫られることになります。

この裁判は、医薬品などのネット販売を行う東京の「ケンコーコム」などが起こしたもので、厚生労働省がリスクの低い一部を除き、インターネットによる薬の販売を4年前に省令で禁止したのは不当だと訴えていました。
1審の東京地方裁判所は「規制は必要だ」と訴えを退けましたが、2審の東京高等裁判所は去年4月、逆にネット販売を認める判断を示し、国が上告していました。
11日の判決で、最高裁判所第2小法廷の竹内行夫裁判長は、「薬のネット販売の禁止は憲法が保障する職業の自由を制約することになるが、現在の薬事法には一律に販売を禁止すべきだという趣旨が含まれているとは言えない。国の規制は法律が委ねた範囲を超えるもので、違法で無効だ」と判断し、国の上告を退けました。
この結果、薬のネット販売は現在の法律の下で事実上解禁されることになり、国は新たな規制が必要かどうか検討を迫られることになります。
国の規制の多くは具体的な内容を法律ではなく省令などで定めていますが、11日の最高裁の判決は、新たな規制を設ける際には法律の枠組みを超えることがないよう強く求めるものとなりました。

4年前の法改正で販売方法規定せず

医師の処方箋がなくても薬局などで購入できる「一般用医薬品」については、平成21年に施行された改正薬事法で、副作用のリスクに応じて第1類から第3類の3つに分類され、販売時に薬剤師らが適切に情報提供するよう規定しました。
販売方法については法律では規定されず、厚生労働省が省令で具体的に定めました。
この中で、アレルギーの薬や重い副作用が報告されている胃薬など、特に副作用のリスクが高い「第1類」と、リスクが比較的高いとされ、多くのかぜ薬や解熱剤が含まれる「第2類」については、薬局などでの対面販売が義務づけられました。
インターネットでの販売は、ビタミン剤や整腸剤などリスクが比較的低いとされる「第3類」だけに限定されました。

ケンコーコム“安全性と利便性は両立できる”

判決を受けて、原告の1社で、インターネットで医薬品を販売している「ケンコーコム」の後藤玄利社長が記者会見を開きました。
この中で、後藤社長は判決を受けて、11日、インターネットで第1類と第2類の医薬品の販売を再開したことを明らかにしたうえで、「長い戦いだったが、われわれの主張が認められ、ほっとしている。厚生労働省は一刻も早く、違法と判断された省令を改正し、正々堂々とインターネット販売ができるようにしてほしい」と話しました。そのうえで、後藤社長は「安全性と利便性は二律背反のものではなく、両立できるものだ。IT技術は進歩しており、新たな技術を活用することで、さらに安全に販売できると考えている」と主張しました。
ケンコーコムでは、安全性を確保するため、現在、薬剤師が顧客と副作用についてインターネットを使った電話やメールでやり取りしたり、過去に購入した薬を顧客ごとに管理し、同じ薬を大量に購入できない仕組みを導入したりしているということです。

厚労相“販売のルールを早急に検討”

判決について、田村厚生労働大臣は「判決の内容を精査して、判決の趣旨に従い、できるだけ早く必要な対応策を講じていきたい。一般用医薬品の使用は、有益な効果をもたらす一方で、副作用の発生のリスクを伴うものであり、薬局・薬店においては、医薬品の販売を行う際、安全確保のための方策に十分に配慮してもらうことが重要だ。厚生労働省としては、今後、関係者に広く参画してもらい、法令など販売に関する新たなルールを早急に検討することにしている。新たなルールが示されるまでの間、インターネット販売の利用については、一般用医薬品の使用のリスクを十分に認識し、適切に対応してもらいたい」とする談話を発表しました。

薬害被害者団体“業者の自主規制でなく、国が責任持って”

判決について、薬事法の改正にあたって厚生労働省が設けた検討会で、医薬品の販売規制の在り方について議論に加わった、全国薬害被害者団体連絡協議会の増山ゆかり副代表は、「判決では、薬事法の本文に販売規制のことが全く書かれていないことが指摘されており、インターネットで医薬品を販売することが安全で問題ないと言われたわけではないと思う。医薬品は一般の商品と違ってリスクがあり、消費者がそのリスクについて十分な知識を持っているとは言えないと思う。利便性が安全性を超えることはあってはならず、リスクのある医薬品が何の規制もないなかで売られるということは、消費者にとっていいこととは思えない。薬のインターネット販売は、業者の自主的な規制ではなく、国が責任を持ってやってほしい」と話していました。

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