社説:韓国議員団来日 政治家の交流に厚みを
毎日新聞 2013年01月09日 02時33分
韓日議員連盟に所属する韓国与野党議員団が来日し、9日から自民、公明両党の幹部や日韓議員連盟所属議員との懇談などに臨む予定だ。
これは日韓議連幹事長である自民党の額賀福志郎元財務相が4日、安倍晋三首相の特使として訪韓し、朴槿恵(パク・クネ)次期大統領と会談したことの一連の流れと言えよう。
日韓双方の政治家が語り合い、相互理解を深めるのは望ましく、大いに推進すべきことだ。対話の果実を韓国に持ち帰ってほしい。
もっとも、日韓の政治家同士の意思疎通は困難に直面している。日韓・韓日両議連の存在感は以前と比べれば見る影もない。
90年代にはまだ日本語を自在に操る韓国の有力議員が何人もいた。「日韓癒着」や「利権」のイメージで批判されもしたが、両国間に摩擦が生じた時に安全弁の役割を果たしたことは否定できまい。
だが、その時代にも世代交代は急速に進んでいた。日本側には理解しにくい論理で、遠慮なく自己主張する韓国民が増えた。
政治家も例外ではない。2001年には韓日議連が日本の中学校歴史教科書の検定結果に対する抗議の意思を示すとして、日韓議連との定期総会を延期したこともある。
こうした推移を経て、日韓政治家の交流は甚だしく衰微する。日韓議連のかつてにぎわった常設事務所が廃止され、会長は渡部恒三氏の引退で空席のままだ。
韓日議連も昨年の総選挙後、約半年間も役員人事が固まらないという異例の事態が続いた。
今や日韓の間では、相手方をあしざまにののしる言葉や一方的な中傷がネット空間などを通じて飛び交っている。政治家同士の相互理解もまったく不十分だ。
こうした状況を放置すべきではない。日韓は似ているようで違う点も多い。いま目立つのは中国に対する姿勢の違いであり、歴史に関する認識の違いも難題だ。しかし、だからといって反目せざるをえない間柄ではない。摩擦があっても相互理解に努め、冷静に競争と協力を続けることこそ賢明な道である。
そのためにも政治家の交流に厚みを持たせる必要がある。日韓議連、韓日議連の活動を再活性化させる、というのが常識的な発想だろう。しかし過去そのままの再現ではなく、新しい交流の姿を模索してもよい。その場合は再活性化ではなく、新たな再編と言うべきだろう。
言語と考え方の違いによるコミュニケーションギャップを克服し、お互いの違いを認め合うことができれば成功だ。そこまで目指す気概を両国の政治家に求めたい。