教育バウチャー制度は学校を崩壊させる | ||||
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(2006.11.14教心ネット) | ||||
全国で相次ぐ履修不足問題、ゆとり教育を求める一方、、教育にも競争原理を取り入れ数値目標を掲げることが要求される中で、各高校が合格実績を上げるため苦肉の策として必修はずしが行われていた。 どっかの首相は、「教育にも競争原理を取り入れれば、教育全体の質が向上する」とのたまっているが、実際には必修はずしなどの不正を働いてでも実績を上げようとする学校がでてくるだけだ。また、現在の高校の現状のように、毎年東大に何十人も合格者を出す超進学校と、教科書を絵本のようにしなければ授業についてこれない生徒が集まる底辺校とに二極化するだけである。教育に競争原理を導入すると言うことは、そういうことにほかならない。 現在、教育再生会議で、教育にも競争原理を取り入れるために義務教育への「バウチャー制度」の導入が検討されている。しかし、バウチャー制度のように教育現場に競争原理を取り入れると、先の高校での履修不足問題が小中学校で起こることにつながりかねない。大切なのは、教育全体の質の向上であって、教育現場に競争原理を導入することではない。 教育再生会議のあるメンバーは、テレビ番組で「バウチャー制度は教育格差を縮めます」と全くのデタラメを話していた。バウチャー制度は、イギリスなど諸外国でも不評で、むしろ教育格差を広げるだけだという。そんな欠陥制度を、いさんで導入しようとするにはなにか裏がある。 現在、特区などで株式会社が学校教育へ参入することが認められるようになった。例えば、2006年度に愛知県でトヨタ自動車などが出資して設立したエリート校の海陽学園がある。しかし、こうした企業がバックボーンになっている学校へは、「私学助成金」は支払われない。バウチャー制度の導入を推奨しているのは決まって財界だ。その財界が、自分たちの設立した学校へ助成金を得るためにバウチャー制度の導入を推奨しているのだ。「競争原理で教育全体の質が向上する」というデタラメと共に。 それに手を貸しているのがどっかの首相というわけだ。国民を愚弄するにも程がある。ダメ教師にやめていただくのはもちろんだが、ダメ総理にもやめていただきたい。 |
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▼サンデー毎日(2006.11.12号)ワイド特集教育バウチャー制度大混乱シミュレーション | ||||
▼安田教育研究所の安田理代表 「もし実現すれば、公立、私立を問わずつぶれる学校が続出し、大混乱が起きる可能性があります」 「地区の20校の中から第1〜第6希望を選んで書類を出さなければなりません。各学校のウェブサイト、教育水準局が出す査察報告書など、山のような資料を読み、学校説明会をあちこち回る。日本と同じように、いろんな噂も飛び交います。時間とお金のない家庭には厳しい制度ですね」 「まず、問題のある子どもの動向を気にする親が多い。その子が行く学校を避けるためです。それから、人数が集まる学校は人気も高まる。最近の親は、『あの学校がいい』という風評が広がると、ドッと流れる傾向が強くなっている」 →日本の高校入試でも、倍率が集中した翌年は倍率が下がり、その翌年は受験生が殺到して倍率が跳ね上がるということのくり返し。 学力テストの成績が基準を下回った学校は、 「失敗校」と認定され、改善できなければ廃校だ。「名前と恥をさらす」制度と表現する英国紙もある。 “お手本”イギリスでは行き詰まり感 小泉内閣時代から、規制改革・民間開放推進会議教育バウチャー制度導入の旗を振り続けてきたが、バウチャーの定義は国によって違う上、世界的には決して主流とは言えないのだ。 さらに、イギリスでも、「揺り戻し」が始まっている。 こともあろうに、サッチャー首相がかつて党首だった保守党幹部が9月、教育専門誌の取材に対し、学力テストによる目標管理や学校名の公表、査察制度、成果主義的賃金体系などを見直す方針を明らかにした。これらの制度によって、「教師の士気が危機的に低下している」と指摘している。 また、ウェールズ地方政府は、学力テストそのものの廃止を決めたほか、全英校長会も今年5月、学力テイストの結果公表を取りやめるように決議している。 ▼9月に、イギリスの教育改革の現状を現地調査した山本由美・浦和大学助教授(教育行政学) 「結局、学校の序列が固定化する傾向が強まったのです。下位の学校ははい上がれず、校長のなり手すら見つからないところも多い。イングランド全体で約1300校の校長が決まっていないとのことでした」 実際、9月1日付の教育専門紙、『TES』には、11ページにわたって延々と校長の求人広告が載っている。 「富裕層が上位校の近くに引っ越すケースが増え、その地域の不動産価格が高騰する現象がかなり前から起きています」 日本の足立区では 「人気校は固定化し、人気が高いほど学力テストの平均点も高い。一方、平均点が低い学校ほど、就学援助率が高く、つまり、所得が低い層が多いという実態がはっきり出ている。人気校は私鉄沿線に集中する一方、下位校はいずれも交通の便が悪く、スラム化しつつある地域もある」 これでは、再チャレンジどころか、ますます低所得者層の子どもが上位校に入るチャンスが狭められてしまう。イギリスでは学校格差が地域格差や階層格差を拡大する悪循環が起きているというわけだ。 つまり日本は、英国が行き詰まりを感じつつある道に、あえて足を踏み入れようとしていることになる。 しかし、東京で多くの区が選択制に流れる中、世田谷区はあえて異を唱える。 「阪神大震災の時、現地に応援に行きましたが、避難所としてきちんと機能していたのは、地域とのつながりの強い学校でした。人と人とのつながりはコストでは測れません。学校選択制は、地域の教育力を低下させる精度と考えています」 ▼佐貫浩・法政大学教授(教育行政学) 「イギリスでは、今も各学校の自由と自主性はかなり確保されています。しかし、日本でこれから行われようとしている改革は、自由と自主性の部分が軽視されており、単に『命令』にどれだけ忠実かを『査察』するような監視・統制的なものになる危険性が高い」 →くしくも、今年10月、必修であるはずの世界史を履修していなかった高校が何百校もあった「未履修問題」はその象徴だろう。 |
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