中部電力浜岡原発が立地する御前崎市と、隣接する牧之原、掛川、菊川市の家庭や事業所に、電気料金を割り引く趣旨で国が現金を給付する「原子力立地給付金」で、福島第一原発事故が起きた二〇一一年度に辞退が五件あったことが分かった。県に資料が残る〇七年度以降、辞退は初めて。
給付金の原資は、国のエネルギー対策特別会計から支出される県への交付金で、四市の中でも合併前の浜岡(御前崎市)、御前崎(同)、相良(牧之原市)、大東(掛川市)、小笠(菊川市)の旧五町エリアの家庭、中小企業の計約四万カ所が対象という。
辞退は五件あり、県は「数としては少ないが、聞いたことがない」(エネルギー政策課)としている。
家庭や中小企業への一一年度の給付額は旧浜岡町が一契約者当たり年一万二千八百五十二円、旧御前崎町が同九千六百三十六円、旧相良、大東、小笠町が同六千四百二十円だった。
毎年十月一日時点で中電と電気の使用契約を結んでいる家庭や企業に振り込んだり、普通為替を渡している。契約者は辞退する時だけ中電に申し出る必要があり、原発のあり方に対する意思表示とも受け取れる。
工場など大口契約者は使った電力に応じ額が増える計算方式となっており、こうした大口も含めた一一年度の給付実績は十六億五千七百五十七万円に上る。
中電静岡支店は「国の特別会計による事業であり、コメントできない」としている。
<原子力立地給付金> 原発などの設置、運転を円滑にするため周辺地域の住民、企業の電気料金を一部肩代わりする制度。電気料金の一部が電源開発促進税として集められるエネルギー対策特別会計が原資。同会計から道県に交付金が支出され、道県はさらに、一般財団法人電源地域振興センター(東京)に補助金として交付。同センターは実際の給付事務を電力会社に委託しており“丸投げ”批判もある。給付額は道県、市町村で幅があり、1世帯当たり年2000〜3万円台。
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