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【暮らし】

<はたらく>ニート就労を後押し NPO 支援プログラム

商店街のクリスマス電飾を取り付けるジョブトレ参加者ら=東京都立川市で

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 就学、就労、職業訓練のいずれもしていない若者「ニート」。ひきこもりになった理由はさまざまだが、ちょっとした後押しがあれば社会に出られる人も多い。就労支援をするNPO法人「『育て上げ』ネット」(東京都)のプログラム参加者は「自分も人の役に立つことができるんだと自信になった」と話す。 (田辺利奈)

 昨年十一月末、東京都立川市の高松大通り商店街。作業着姿の男性らがクリスマス電飾を電柱に取り付ける。二十代と三十代の三人はNPO法人「育て上げ」ネットのプログラム・ジョブトレの参加者。就労への一歩として、地域の商店街のチラシ配りやお祭りの手伝いなどといった「ご用聞き」に取り組む。

 脚立を設置しての作業は、道幅を狭めてしまう。「邪魔になっていたら、すみませんって声を掛けろよ」。同ネットのスタッフ大村立秋さん(41)が声を掛ける。コミュニケーションを取ることが苦手な参加者もいる。さりげない一言が、なかなか出てこない。

 作業の依頼をした同商店街振興組合理事長の伊藤献児さん(66)の指示で、雪の結晶や星形の飾りを付けていく。一人が電柱をコーンで囲い、周囲の安全を確保する。一人は、電飾を準備する。一人は脚立を設置し、上って取り付ける。初めは要領を得ず手間取ったが、徐々に役割分担もできスムーズに進むようになった。

 大村さんは、通行人の誘導を担当した三十代男性に「仲間にも、通行人の状況を知らせながら作業しろよ」と、度々アドバイス。最初は黙って誘導灯を振っていたが、「自転車来ました」など少しずつ大きな声が出るようになった。

 通りの両側の約二メートル間隔の電柱に計二十三個を取り付けて、作業は終了。伊藤さんは「店主たちは昼間に店を空けられないし、夜の作業は年寄りには危ない。とても助かります」と話す。伊藤さんから「ありがとうございました」とお礼を言われると、三人にはほっとした表情が浮かんだ。

 参加した埼玉県の三十代男性は「体を動かすことで体力もついてきて、就職に前向きになれた」と話す。専門学校を出た後、就職はせず家にこもっていた。両親の勧めで、昨年三月からジョブトレに参加することに。昼夜逆転の生活を改善することから始め、農業の手伝いや「ご用聞き」に取り組んでいる。苦手な人間関係も「初めに比べたら、みんなといろいろ話すようになった」。

 二十代男性も「職種にこだわっていたが、作業に参加するうち、別の分野でもやりたい仕事につながっていると気付いた」と話す。朝から夕方までの新聞折り込みや草刈り作業は、体力的にも大変。でも、「自分にもできるんだと自信になってきた」と話す。

 同ネットは、人間関係が苦手で、自分の力だけでは前に進めない若者に、社会活動に参加する機会を提供している。厚生労働省の地域若者サポートステーションの委託事業では、働くことに悩む十五〜三十九歳の若者向けの就活セミナーやコミュニケーション講座などを開催。本人だけでなく家族など周囲の人への支援もしている。

 工藤啓理事長(35)は「仕事に就くことではなく、働き続けることを目指している」と話す。支えられる側が支える側になれるような「社会投資が重要」という。

<ニート> 総務省の労働力調査によると、15〜34歳の無業者のうち、通学も家事もしていない人は、この10年ほど60万人台で推移しており、2011年は約60万人。

 大阪府は11年から、ニートの中でも就労意欲のある人を「レイブル(遅咲きを意味するレイト・ブルーマーの略)」と呼び、支援を始めた。12年11月23日には、名古屋、東京、大阪の各NPOが「レイブル100人会議」をそれぞれ開き、当事者や支援者らが意見交換した。

 

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