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高校野球コラム

野球を好きになる七つの道 〜その5〜

2010年07月24日

五、勉強や遊びを大切に

写真野球評論家・桑田真澄さん=鈴木好之撮影  68年、大阪府生まれ。甲子園で投手として20勝。86年、巨人に。通算173勝。07年に米ピッツバーグ・パイレーツに移籍。08年に現役を引退。現在はスポーツ報知評論家。著書に『野球を学問する』(平田竹男と共著)『心の野球――超効率的努力のススメ』など。
写真甲子園で投げる
写真効率的な練習について解説する=鈴木好之撮影

 明治時代のはじめごろ、野球は放課後を楽しく過ごすための遊びでした。そこから、長時間練習が当たり前になったのは、戦前に早稲田大学の監督をしていた飛田穂洲(とびた・すいしゅう)さんが提唱した「野球道」の影響が大きいと言われています。「千本ノック」に象徴される猛練習、武士道にも通じる精神主義、指導者や先輩への絶対服従……。

 残念ながら、いま「野球道」は選手を罵倒(ばとう)することを恥じず、体罰をためらわない指導者の精神的な支柱にさえなっています。

 しかし、飛田先生が「野球道」を提唱したのには別の理由がありました。当時は軍国主義に向かう時代です。軍部や政府から「敵性競技」として、にらまれがちだった野球をなんとか守りたいという思いも強かった。

 その証拠に、監督としての飛田さんは決して一方的な指導をしていたわけではありません。合理的な最新の戦術を取り入れ、選手には自己管理を求め、勉強してきちんと学校を卒業することを奨励するなど、バランスのとれた指導者だったのです。

 みなさんのような成長期の人には心身のバランスが大切です。練習時間を短縮して空いた時間は、勉強や遊びにあててください。「苦手な勉強で苦労するより、得意な野球の練習に集中した方がいい」と思う人がいるかもしれません。でも、人間は得意なことだけで生き抜くことはできません。プロ野球の世界で長年活躍できるのは、対戦相手を分析したり、自分自身をコントロールしたりできる、賢い選手です。現役生活を引退してから生きるのは、遊びや新しい出会いを通じて身につけた「感謝する心」「ひとを思いやる気持ち」です。こうした能力を養うためにも、生活のすべてを大切にしてもらいたいと思います。


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