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'13/1/10

性急な改革方針に不信募る


 広島電鉄(広島市中区)の越智秀信前社長の解任の動きが急展開したのは、仕事始めの4日だった。大田哲哉前会長(故人)の招きで2年半前にトップに就いた官僚出身の越智氏だったが、他の役員との溝は修復不能の状態にまで深まっていた。

 4日午前、本社10階の会議室で新年の課題を語り合う恒例の場。常勤の取締役8人がそろう中、専務だった椋田昌夫新社長が越智氏にぶつけた。「臨時取締役会を開いてほしい。社長の解職を提案する」

 取締役からは越智氏の経営手法に対する不満が相次いだ。「仕事のやり方を変える。時間がほしい」と再考を求める越智氏。椋田氏は「それはない」と遮った。約1時間の議論の末、越智氏は自身の降格を議題とする取締役会の8日開催を認めた。

 運輸官僚から転じた越智氏は事業の公共性を考慮し、運賃値上げや新路線などで積極的に情報を発信。市民の反応を探った。だが、取締役会の議論よりも先に動く姿勢は他の経営陣に「独断」と映り、溝が深まった。

 「就任時は社内の支持が強かったが、徐々に社員がついていけなくなった」。越智氏の孤立を、広電労組の佐古正明執行委員長が振り返る。2011年秋には大田氏が亡くなり、後ろ盾を失った。

 椋田氏の背中を押したのはことし元日のテレビ番組。値上げを月内に申請する方針を語る越智氏の姿があった。「職責を果たしていない」。3日後の行動につながった。

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 広島電鉄の越智秀信前社長は9日、中国新聞の取材に「広電と広島のために誠心誠意尽くしてきた。不正もなく理由が釈然としない」と社長解任に反論した。

 解任理由として指摘された、路面電車の運賃値上げなどで報道対応を先行させた点は「検討段階で多くの人に知ってもらい、意見や感想を聞きたかった」と説明した。「仕事のやり方はいろいろ試していた。いきなりのレッドカードはひどい」と訴えた。




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