話題のキーワード

社説

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。

2013年1月11日(金)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

大型補正予算―昔の自民のままですか

自民党は変わっていない。そう思わざるをえない。安倍政権が、今年度の補正予算の概要を固めた。国の支出総額は13兆円強と、09年春に麻生政権がまとめた[記事全文]

高2生の自殺―体罰許さぬ教育現場に

大阪市立桜宮高校2年の男子生徒が昨年12月、自殺した。生徒はバスケットボール部の主将で、前日の練習試合でミスをしたとして顧問から体罰を受けていた。体罰が「つらい」という[記事全文]

大型補正予算―昔の自民のままですか

 自民党は変わっていない。そう思わざるをえない。

 安倍政権が、今年度の補正予算の概要を固めた。

 国の支出総額は13兆円強と、09年春に麻生政権がまとめた過去最大の補正予算に迫る。

 基礎年金の国庫負担分を除いた10兆円余の「緊急経済対策」のうち、公共事業が半分を占める。財源は国債の発行だ。当初予算と合わせた今年度の国債発行額は、50兆円に近づく見通しだ。

 国の借金残高が1千兆円に達するなか、安倍政権は財政運営について、「まず経済成長を実現し、税収を増やす」「短期は柔軟に、中・長期は規律をもって」と強調する。

 そうした考えを頭から否定するつもりはない。しかし、政権復帰に浮かれたかのような大盤振る舞いがすぎないか。

 公共事業は「復興・防災」や「暮らしの安心・地域活性化」を名目に、年間予算に匹敵する額に積み上げられた。今年度中に使い切れるはずはなく、先々への予約の様相だ。

 防衛分野でも、生産に日本企業がかかわるとして、ミサイル購入費などが経済対策に位置づけられるという。

 「まず金額ありき」で、与党が早々に「10兆円規模」を打ち出したことの弊害である。

 思い出すのは、東日本大震災を受けた11年秋、そして09年春の補正予算だ。

 震災復興の補正には、野党だった自民、公明両党も深くかかわったが、被災地再建とは直接関係のない便乗・こじつけ型の支出が横行した。

 麻生政権の09年春の補正も、リーマン・ショックによる急激な経済の落ち込みを受け、規模が優先された。その後、会計検査院からさまざまな無駄が指摘される始末だった。

 先の衆院選で自民党は「国土強靱(きょうじん)化」を公約の柱に掲げた。いま、党本部は陳情に訪れる業界団体の関係者らで大にぎわいだ。大型の補正予算は、衆院選での支持のお礼と夏の参院選に向けた期待料なのか。

 大型補正には、13年度前半の景気を押し上げる思惑もある。来春の消費増税の実施をこの秋に最終判断する際、その数値がカギを握るからだ。

 財政再建の旗振り役であるべき財務省までが増税実現のための歳出増で歩調を合わせたのなら何をかいわんや、である。

 年明けから所得税で震災復興増税が始まった。今後も消費増税など負担増は目白押しだ。

 こんな予算編成を続けていては、納税者が黙っていまい。

検索フォーム

高2生の自殺―体罰許さぬ教育現場に

 大阪市立桜宮高校2年の男子生徒が昨年12月、自殺した。

 生徒はバスケットボール部の主将で、前日の練習試合でミスをしたとして顧問から体罰を受けていた。体罰が「つらい」という悩みを書き残していた。

 顧問は体罰の事実を市教委に認めている。学校教育法は体罰を禁じており、教育者として断じて許されない行為である。

 市教委は弁護士らでつくる外部監査チームを設置した。体罰の期間や対象を、過去にさかのぼって明らかにする必要がある。同時に、亡くなった生徒の親に調査内容を包み隠さず伝え、なぜ防げなかったのかを説明する責任がある。

 これまでの経緯をみると、市教委や学校の体罰への認識は、あまりに甘い。

 2011年9月、市の公益通報制度の窓口に、桜宮高校の名をあげて体罰の通報があった。しかし学校側はスポーツの部活動の顧問たちに尋ねただけで、「体罰はない」と市教委に報告した。市教委も、通報を受けた市も、それをうのみにした。

 この感度の鈍さは何なのか。なぜ、生徒への聞き取りをしなかったのか。結果として自殺した生徒を救う機会を逃したのではないか。残念でならない。

 文部科学省によると、体罰で処分を受ける教員は、年350〜400人いる。授業中の次に多いのがクラブ活動中の体罰である。

 体罰をした顧問は1994年に保健体育科教諭として赴任した。チーム強化の指導力は評価されていた。

 部活動が実績をあげ、学校の名声を高める。そんななか、学校全体に顧問に直言しにくい雰囲気があった可能性もある。

 試合に出たいので顧問に逆らいにくい。自殺した生徒だけでなく、他の生徒にも耐え難い日々だったのかも知れない。

 部活動も教育だ。時間はかかっても生徒の能力を引き出し、やるべきことを考え、実行するように育てる。その結果として勝利へ導くのが基本である。

 体罰で厳しく鍛え、勝利を得たとしても、暴力が正当化されることはない。

 かつて体罰をした大阪府のある教諭が、府教委に提出した反省文がある。力で服従させても表面的な従属関係にしかならないとし、「生徒に憎しみや無力感しか生まなかったと今は実感している」と結ぶ。

 愛のムチは暴力をふるう側の方便に過ぎない。一歩間違えれば将来ある子の命が失われることを、教育に携わる人はかみしめてほしい。

検索フォーム

PR情報

注目コンテンツ

  • ショッピング足元が冷えてタマラナイ…

    対策グッズでほんわか解決!

  • ブック・アサヒ・コム女優激場 鈴木砂羽さん

    へつらえない人間なんです

  • &M大人の楽しみ、モーターサイクル

    40〜60代に再ブームの兆し

  • &w幸せは「1割の不満」のなかに

    重松清×大平一枝 対談

  • どらくあの名店で宇治茶を堪能する

    茶を淹れ、食べ、知り尽くす旅

  • 朝日転職情報

  • 就活朝日2014