アスベスト:阪神大震災がれき処理・作業員アンケ 8割、防じんマスクせず 6人、石綿被害症状

毎日新聞 2013年01月09日 大阪朝刊

 阪神大震災(95年)でがれき処理や被災建物の解体などに従事した作業員を対象にしたアンケートで、回答した128人の半数がアスベスト(石綿)の危険性を認識していたにもかかわらず、約8割が防じんマスクを着用していなかったことが分かった。立命館大の南慎二郎研究員(産業論)が8日、発表した。うち6人が、石綿が肺に沈着して呼吸が困難になる石綿肺などの症状を訴えているという。【錦織祐一】

 調査は昨年11〜12月、京阪神地区の建設作業員労組を通じて実施した。南研究員によると、阪神大震災の復旧作業を巡る労働実態の調査は珍しいという。

 アスベストの危険性については、20%が「よく知っていた」、30%が「まあまあ知っていた」と回答。しかし、現場での粉じん対策を聞いたところ、「粉じんマスク」との回答は18%にとどまり、「簡易的なガーゼマスクやタオル」が55%、「散水」が17%だった。

 また、作業現場の状況について、計74%が「非常に粉じんがひどかった」か「いつもほこりっぽかった」と回答したが、現場周辺への対策については、55%が「特になかった」と答えた。飛散性が高く75年から規制されている吹き付け石綿についても、「作業中に触った」との回答が44%に上った。

 石綿肺がんの潜伏期間は平均40年とされる。震災後約18年で石綿特有の疾患が128人中6人で確認されたことについて、南研究員は「震災の復旧作業に従事したことによる健康被害リスクが高まっていると考えられる」と分析。「震災の混乱の中で対策が乏しかったことが明らかになった。東日本大震災の被災地では、この教訓を生かして対策を取ってほしい」と話している。12日に神戸市勤労会館(同市中央区)で開かれるシンポジウムで調査結果を発表する。

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