バスケット部の男子生徒が顧問教諭から体罰を受けた翌日に自殺した大阪市立桜宮高校では、聖域化された部活の中で顧問教諭による暴力が常態化していた。
学校側は9日夜(2013年1月)、保護者を集めて説明会を行ったが、保護者の中からは「先生や学校だけを責めるのはおかしい」という声もあったという。
説明会には自殺した男子生徒の両親も出席した。自殺する前日の息子の模様を父親が初めて語った。「1回に2、3発殴られたというのではないんです。本人が(殴られた時に)受けた印象として、『30発、40発』と彼の口から出ている。お通夜の席でバスケ部の顧問に彼の顔を見たもらい、『これは指導なのか体罰なのか』と問い質したら、『体罰です』という言葉が出ました。しかし謝罪もなかった」
自殺したのは昨年12月23日で、母親らによるとその5日前の18日にも、帰宅した息子から「10発ぐらい殴られた」と聞かされたという。翌19日には顧問教諭が母親を呼び出し、「キャプテンを辞めさせる」と通告されたという。そして、22日の練習試合に負けて30、40発殴られている。もはや指導のための体罰の域をはるかに超えた暴力。主将に就任しバスケ部を良くしようと思う17歳の少年にとって、これではたまったものではない。
母親は練習試合に敗れ、帰宅した息子の模様を「いま思えばある変化があった」と次のように語った。「話はいつもするほうだが、(自殺前日は)とくに話をしたと感じた。『聞いて、聞いて』と。しゃべることを全部聞いて欲しいという意味なんだなと思ったが、ちょっとそっとしておこうかと思った。まさか…、すごく悔やまれます」
説明会に出席した保護者によると、「(校長が)語気を荒げて『体罰は一掃する』といっていたが、一掃されるでしょうか。クラブは弱くなりますよね。『先生や学校だけを責めるのはおかしい』と擁護するような意見があり。これには拍手もあった」という。
バスケ部の体罰問題は今回が初めてではない。おととし9月に大阪市教委にこんな通報があった。「バスケ部の体格の良い男子教諭が子ども達に体罰を加えており、それを見ている子供たちまでが怯えている」。学校側はこのとき顧問教諭に聞き取り調査を行い、「体罰はしていない」という答えを鵜呑みにして大阪市教育委員会市に報告している。このとき、桜宮高校ははバレーボール部顧問による部員への体罰問題も抱えていた。
体罰が常態化していた中での自殺にもかかわらず、いまだに体罰擁護まで出る背景にいったい何があるのか。公立高校ながら「スポーツ強豪校」といわれるほどの実績を上げ、多少の体罰は強くなるためには仕方がないといった風潮が学校や保護者にあるのかもしれない。
「体罰のような指導はして欲しくない」という自殺した男子生徒の父親の隣で、母親が「子どもが『愛のムチ』とわかるような指導だったら…と思う」と話した。愛のムチ発言を訝ったタレントの高木美保は、「一つ言わせてもらいたい」と切り出して次のように語った。
「この体罰報道をずっと見ていて、スポーツ指導者という立場の人たちの多くが、『信頼関係がある中でのことならいいんですけど』と発言をしていました。私は信頼関係があってもなくても体罰は許されないと思う。
信頼関係が築けないから体罰なのか。じゃあ、自殺をした子は弱いから自殺したのか、強いから殴ってもいいのか、いくらでもそういう理屈が出てきてしまう」
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