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休止にあたり運営者より御挨拶 (2008.2.29)


2007年10月22日、僕はマンハッタンの街角に立っていました。

折り悪く、この日はタクシー組合がストライキを敢行中。動いているイエローキャブの大半はメーターを停止され、数ブロック乗せてもらっただけで二人で$20取られるボッタクリに、少しは腹も立ちました。
けれどもストライキの目的が「GPSとクレジットカード支払機の搭載義務化に抗議するものである」と後に知り、僕は素直に「カッコイイ」と思いました。


1996年の僕は、メモリ16MBのデスクトップPC・3分40円の高価な回線・28,800bpsのモデム・月$20のバーチャルサービスを使ってを立ち上げました。
2008年の僕は、メモリ1024MBのノートPC・月6千円で使い放題の100,000,000bps FTTHを通じ、東京から600km離れた街で仕事しています。
この12年、技術の進歩は実に驚くべきものです。

にもかかわらず、こんにちの生活は、必ずしも豊かになったとは言いがたいものがあります。
世を占めるウェブサイトの多くが時間泥棒へと姿を変え、ときには人々を苦しめるための凶器に成り下がっています。
Alexaの調査によれば、全世界のウェブサイトの実に98%がより遅いそうです。
画面の4分の3が広告や無意味な情報で埋め尽くされ、人々を機械の前に縛り付けて離さず、未知なるものと出会うための時間を奪い、機械無しで生きてゆくための能力を奪ってゆきます。
この業界でこの仕事に携わる一人として、恥ずかしく、また悔しく思います。


一方で、インターネットとを通じて僕が得たものは計り知れません。
25歳の僕は、顎で使われるだけのサラリーマンで、失うものを持たず少々鼻息の荒い、只の無知な青年でした。
現在の僕は、インターネットに携わる仕事を自らの意思で選び、フリーランスとして仕事をしています。ときには苦しい日々もありますが、それはとても充実したものです。
インターネットが無ければ、が無ければ、今の日々は決して無かったに違いありません。
この場を借りて、かかわってきた全ての皆さんに御礼を申し上げます。
ありがとうございます。


残念ながら(そして喜ばしいことに)今、僕にはよりも遥かに大切なものがいくつもあって、のために割く時間がありません。
ですが僕はインターネットから離れるわけではありませんし、(たぶん)皆さんが目にするどこかで仕事をし、この現状を打ち砕くために戦っていると思います。
この御挨拶は、決してお別れを言うために書いているわけではありません。

僕にはとしてやり残したことがありますし、未練もあります。
それは皆さんの知るとは遠くかけ離れたものになるでしょうし、という名前すら持たないかもしれません。
けれども、もし誰も現れなければ、50歳になっても60歳になっても、ふたたびこのキーを叩き、創り出してやろうと思っています。
それまで、しばし、休みをください。

それではまた、インターネットのどこかでお会いしましょう。

2008.2.29(金) オーナー管理人 たかのゆきまさ

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