海と船に関する諸々の事項



海水
海水の密度は通常、平均値として1.025g/cm2
主成分は、H2O:96.2%、NaCl:2.71%、MgCl2:0.54%、有機物:0.33%、MgSO4:0.12%、CaSO4:0.08%。


海流の速さ
黒潮の速さが1〜4ノット、メキシコ湾流の速さが最高で4〜5ノット。
海流の幅が狭い程速い傾向がある。
陸地付近でない限り、流速の上限は5ノット(およそ時速9km)程度。
鳴門の渦の最大流速は10ノット以上。
湾内の流れは、コリオリ力(緯度による地球の自転の速度差から来る力)の影響で、
北半球では半時計回りに、南半球では時計回りになることが多い。


干満
満潮と干潮は普通1日2回(平均12時間25分)、場所によっては1回(平均25時間50分)
朔月と望月の1〜3日後に潮差が最も大きくなるのが大潮で、
上弦と下弦の1〜3日後に潮差が最も小さくなるのが小潮。
25時間50分で同一経度を通過する月の潮汐力と、その0.46倍の太陽の潮汐力の合成による。
潮汐力による流れの変化が潮流で、これはほぼ一定方向に流れる海流や沿岸流と異なり、流れの方向が変動する。



海の波
水深が半波長より大きい場合、海水の運動の影響は海底まで及ばない。このような波を表面波と呼ぶ。
水深が半波長より小さい場合、海水の運動は海底に達し、このような波を長波と呼ぶ。
表面波では、
波の速度=(重力加速度×波長/2π)0.5
また
波長=(重力加速度×波の周期2)/2π
長波では、
波の速度=(重力加速度×水深)0.5
ただし、津波の場合は、その運動が海底で起こったものなので、長波となる。
津波の周期は数十秒から数十分以上に及ぶ。
長波では、水深が浅くなるに従って速度は遅くなり、波長も短くなるが、
1波長に含まれるエネルギーがほぼ一定なので波高が大きくなる。
さらに海岸に近づくと、波の形を保てなくなり、先端が砕けた砕波となる。

海岸に沿って波が砕ける海域を、砕波帯と呼ぶ。ここでは沿岸流を伴うことが多い。
沿岸流は海岸線に斜めの方向から打ち寄せた波が海へとすべて戻りきれずに、沿岸に沿って流れるためできる。
沿岸流は地形によってある狭い範囲で比較的強い流れで海岸から沖へと向かうが、これを離岸流と言う。
沿岸流と離岸流をまとめて海浜流と呼ぶ。
これに対して、沖合いの流れが海岸流であり、海流や潮流からなる。
表面に現れずに、中間層あるいは海底にそって流れている場合もあり、
この場合を特に「戻り流れ」と言い、水難事故の原因となることも多い。

波が島などの自然地形や港湾の構造物にさえぎられた場合、回折や反射が起こる。
このことから、波の集中が生じ、高い波高を記録することがある。
このため、海岸に消波構造物を設置する
一般に浜辺で見かける波は周期が5秒以下、波高で2m以内位。
暴風時には周期15秒、波高10mという波が来ることもある。

波長と波高の関係は、観測結果によると
  波長:  波高:波高/波長
 50m:3.3m:1/15
150m:7.5m:1/20
300m: 12m:1/25

海面上を吹く風によってできる波を風浪という。風が十分な距離を連続して吹いている場合、
最大波高=0.26×(風速)2/重力加速度
の関係がある。風浪の波の形は崩れたり、三角形になったりする。
強い風浪が他の海域に伝播するとうねりとなる。
うねりの場合、波の形は正弦波形に近い。
波高に比べて波長が長く、30倍から100倍となる。(1mの波高の場合、波長は30m〜100m)。
周期は長く5〜20秒位で、波長は50〜1000m位である。
うねりは深海域で発生するので表面波であり、個々の波の速度はやはり
波の速度=(重力加速度×波長/2π)0.5
である。ところがうねりは、数個の峰を持った一群の群れとして進んでぐる。この群速度は
波群の速度=0.5×(重力加速度×波長/2π)0.5
ですすむ。これは池に石を投げ込んだ時の波紋や、船の後に生じる波と同じ現象である
うねりの群速度は、低気圧の進行に比べてかなり大きいので、遠方における低気圧の発生をうねりから知ることができる。
うねりが海岸に近づき、水深が波長程度になると長波となり、波峰線は急峻な海岸以外では等深腺にほぼ平行になる。



日本近海の波浪(wave in greater coasting of Japan)(海上保安腸水路部調査)

風速(m/sec)     東シナ海      太平洋日本海、オホーツク海
λ(m)H(m)λ(m)H(m)λ(m)H(m)
5 160.9 8 0.5 7 0.7
10 271.8 15 1.4 9 1.6
15 432.6 38 2.6 15 2.8
20 673.6 59 4.2 30 4.3
25 934.6 85 6.0 53 5.8
301205.6114 7.8 78 7.5
351486.6148 9.6107 9.3
401777.618511.514011.2



波の階級

階級 説明          波高(m)
0dead calm 鏡のようである     0
1very smooth わずかにさざ波がある  0〜0.5
2smooth さざ波が立つ      0.5〜1.0
3slight 細い白い波が見える   1.0〜2.0
4moderate 全部白波となる     2.0〜3.0
5rather rough白波が高い       3.0〜4.0
6rough 大波となる       4.0〜6.0
7high 大波高く、波の山の前緩急6.0〜9.0
8very high 怒涛が非常に高い    9.0〜14.0
9phenomenal 怒涛が山のように高い  14.0〜



うねりの階級

階級 説明       波高(m)
0no swell うねりなし    0
1slight swell うねり軽し    0〜2.0
2moderate swell うねりあり    2.0〜4.0
3rather rough swellうねりやや大なり
4rouht swell うねり大なり
5heavy swell うねり高し    4.0〜
6very heavy swell うねりすこぶる高し
7abnormal swell うねりことに巨大



風力の階級

階級 名称       風速(m/sec) 海上
0calm 静穏        0.0〜 0.3 鏡のような海面。
1light air 至軽風       0.3〜 1.6 うろこのようなさざなみができるが、波頭に泡はない。
2light breeze 軽風        1.6〜 3.4 小波の小さいもので、まだ短いがはっきりしてくる。波頭は滑らかに見え、砕けていない。
3gentle breeze 軟風        3.4〜 5.5 小波の大きいもの。波頭が砕けはじめる。泡はガラスのように見える。所々に白波が現れることがある。
4moderate breeze和風        5.5〜 8.0 波の小さいもので、長くなる。白波がかなり多くなる。
5fresh breeze 疾風        8.0〜10.8 波の中位のもので、一層はっきりして長くなる。白波がたくさん現れる。(しぶきを生ずることもある。)
6strong breeze 雄風       10.8〜13.9 波の大きなものができ始める。いたる所で白く泡立った波頭の範囲が一層広くなる。(しぶきを生ずることが多い。)
7moderate gale 強風       13.9〜17.2 波は益々大きくなり、波頭が砕けて、できた白い泡は筋を引いて風下に吹き流され始める。
8fresh gale 疾強風      17.2〜20.8 大波のやや小さいもので、長さが長くなる。波頭の端は砕けて水煙となり始める。泡は明瞭な筋を引いて風下に吹き流される。
9strong gale 大強風      20.8〜24.5 大波。泡は濃い筋を引いて風下に吹き流される。波頭はのめり崩れ落ち、逆巻きはじめる。しぶきのために視程がそこなわれることもある。
10whole gale 全強風      24.5〜28.5 波頭が長くのしかかるような非常に高い大波。大きな塊となった泡は濃い白色の筋を引いて、風下に吹き流される。海面は全体として白く見える。波の崩れ方は激しく衝撃的になる。視程はそこなわれる。
11storm 暴風       28.5〜32.7 山のように高い大波。(中小船舶は一時、波の陰に見えなくなることもある。)海面は風下に吹き流された長い白色の泡の塊で完全に覆われる。いたる所で波頭の端が吹きとばされて水煙となる。視程はそこなわれる。
12hurricane 台風       32.7〜37.0 風速計を使用しない場合、風力12以上は全部風力12に含める
13−        37.0〜41.5
14−        41.5〜46.2
15−        46.2〜51.0
16−        51.0〜56.1
17−        56.1〜61.3



Wind Gradient

空気には粘性があるため、地上付近では風が弱くなる。高さによる風速の変化をWind Gradientと呼ぶ。
これは大気の状態や地形的な影響によって変動するが、
気象学上の風速の基準である海面上10mの風速を1.0としたとき、
高さ10m以下は、

風速=(高さ1mの風速)×0.465×log10(高さ)+1

高さ10m以上は、

風速=(高さ10mの風速)×(高さ/10)
(k=1/6〜1/7程度)

の近似式が利用できる。



船から見える視野
地球の半径をR=6367kmとして、船の揺れや波、空気の密度による屈折等をのぞいて考えた場合、
2=(R+X)2−R2
の式を解いて

X:視点の高さ(m) 1  2  3  5  7 10 15 20 25 30 40 50
Y:視野(km)    3.6 5.0 6.2 8.0 9.411.313.816.017.819.522.625.2

さらに相手の船のマストの高さからの視野を同様に考えて足すと、何km先の船が見えるかわかる。
近似式は、Y=3.57X0.5



船が見える視野角
相手の船の長さが50mとして、相手の船がどれくらいの視野角で見えるかを考えると、
Y=2*tan-1(0.025/X)の式を解いて

X:距離(km)  0.10.20.5  1  2  3  5  6 10 15 20 25
Y:視野角(度)28.0714.045.712.861.430.950.570.480.290.190.140.11

太陽や月の視直径が0.5度程度なので、6km先の50mの船は太陽や月と同じ程度の大きさに見える。
また、両肩を視線と垂直にして前に伸ばした腕の親指の爪の視野角が1.5度程度なので、2km先の50mの船はそれくらいの大きさに見える
同様に考えると船の大きさが50mのN倍だとすると、同じ視野角で見える距離もN倍になる。
つまり、25mの船は3km先で太陽と同じ程度の大きさに見えるし、1km先で腕を伸ばした時の親指の爪程度の大きさに見える。
近似式は、Y=2.86/X、船の山のように高い大波。(中小船舶は一時、波の陰に見えなくなることもある。)海面は風下に吹き流された長い白色の泡の長さをL(m)とすると、Y=0.0573L/X
(ただし、近距離になると誤差が拡大する)

視力2.0の人間は30秒、つまり、1/120度のものまで識別できるので、水平線上に船体が出ている船を視認することは十分可能である。

目視による大体の目安としては、2.4mの高さから見て
人がいることがわかる           …約640m
人が立ったり座ったりしていることがわかる …約410m
指標の周りの潮の流れがわかる       …約230m



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