船にかかる力




復元力(復元モーメント)


ここでは横断面についての力を考える
重心と浮心(浮力の作用点、没水部の横断面の面積モーメントの中心)のつりあいにより、
浮いているものに回転モーメントが働く
これが船に働き、船が通常浮いている状態に戻そうとする力を、復元力(復元モーメント)と言う


浮心Bの鉛直線と船の断面の中心線との交点を(横)メタセンタと呼ぶ
船が少し傾いた時、浮心は水面下の面積のモーメント中心に移動するが、
メタセンタMより重心Gが下にある場合は復元力が働いて船は安定する(左図)
メタセンタMより重心Gが上にある場合は負の復元力が働いて船は転覆する(右図)
重心が低く、また傾いた時に浮心Bの横方向への移動が大きい(例えば幅が広い)船は転覆しにくい
また、重心が(積荷、浸水などで)中心線上よりずれている場合、当然そちら側に転覆しやすい



船を縦方向に曲げようとする力


上段が静水
中断がホッギング hogging
下段がサッギング sagging
船体強度を超えて力がかかると、船体が縦に折れる
船は、造波抵抗の点から、同じ横断面の場合長い船ほど速度が出る(速長比)が
上記の観点から構造的な強度限界が制限となるし、また回頭のしやすさにも影響する



船の横断面を変形させようとする力


左右非対称にかかる力により船体が押しつぶされることがある
これをラッキング rackingという
また、この力が前後で逆方向に働いた場合、
船体をねじる力がかかり船体を破壊する場合がある



船の推進を妨げる力

船が水を押分けて進むためには推進力が必要だが、これに対する抵抗として、
摩擦抵抗R:frictional resistance(粘性抵抗と慣性抵抗)、
造波抵抗R:wave making resistance 、
渦抵抗R:eddy resistance 、
空気抵抗R:air resistance があり、
これらの合計を全抵抗R:total resistance とする

摩擦抵抗には、水に対するものを言う
空気抵抗は船の場合ほとんど無視できる(全抵抗の1〜3%)
帆船の様な低速な船では摩擦抵抗が全抵抗の大部分を占めるが、
近代の高速船になると造波抵抗が全抵抗の6割をしめることもある

粘性抵抗に付いては、ストークスの法則があてはまる
ストークスの法則は、気体と液体との粘度の差から、
この場合、浸水部の表面積のみを考えれば良いので、

F∝ηv  η:粘度、v:速度、:長さ
(船体浸水表面積(船体表面積のうち水中にある部分)がの関数)

慣性抵抗については、

F∝ρ(v2  ρ:流体の密度

で求められる
どちらも計算には形による係数が必要だが
フルードによる実験式により、摩擦抵抗R(kg)は以下の式によって計算される

=λγ{1+0.0043(15−t)SV1.825(kg)
=λγSV1.825(kg):(実船では水温修正を行わない)

λ:摩擦係数(船型や素材により変化)、γ:水の比重(kg/m3
t:水温(℃)、S:浸水表面積(m2)、V:速度(m/sec)

造波抵抗は、船の速さに対して一様に増加せず、波状に変化するが、
これは船首波と船尾波の緩衝による
幾何学的に相似な船では、速度:長さの1/2乗の比が一定であるので、
模型で試験を行って全抵抗を測定し、計算から求めた擦抵抗を引くと造波抵抗が求められる

これらによって求められる全抵抗は推進力とつりあうので、
以上の計算から船の推進力を求めることができる



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