尿路性器腫瘍

 泌尿器科では、

副腎腫瘍腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌前立腺癌、尿道癌、精巣癌、後腹膜腫瘍などの診療を行っています。それぞれの臓器の位置については図1の「泌尿器科で扱う臓器」をご覧ください。

(図1 泌尿器科で扱う臓器)

副腎腫瘍

 副腎は左右の腎臓のそれぞれの上に帽子のように乗っている小さな臓器で、様々なホルモンを分泌しています。ここからできる腫瘍が副腎腫瘍です。良性腫瘍が多く、副腎癌は稀です。ホルモンを過剰に分泌している場合や大きなものなどは手術療法を行うことがあります。当科では術前の諸検査にて十分に安全に行えると判断できる場合には内視鏡補助下に創を小さくして行う手術を行っています。

腎癌

 腎臓は左右に1個ずつあり、尿を作ったり血圧を調節したりする働きをしています。この腎臓にできた癌が腎癌です。最近は人間ドックや検診の超音波検査で発見される例が増えています。この癌は化学療法や放射線療法が無効で手術療法でできる限り切除することが原則ですが、切除不能例や転移例には動脈塞栓術やインターフェロン療法、インターロイキン療法などを行っています。当科では術前の諸検査にて十分に安全に行えると判断できる場合には内視鏡補助下に創を小さくして行う手術を行っています。

膀胱癌

 膀胱は下腹部にある、尿を貯め排泄する臓器です。膀胱癌は表面の粘膜から発生し、人間ドックや検診で尿潜血をきっかけに見つかることがあります。診断には内視鏡を尿道から挿入して直接観察する方法が一般的です。多くは表在性で内視鏡手術によって膀胱を温存することが可能です。浸潤癌の状態で発見された例でも放射線療法と化学療法を併用してできる限り膀胱を温存するように努めています。不幸にして膀胱全摘術が必要になった患者様ではストーマを持たない回腸新膀胱造設術を第一選択にしています。

前立腺癌

 前立腺は男性生殖器の一部で膀胱の真下にあり尿道を取り囲むように存在している臓器です(図2男性生殖器)。精液の一部を作っています。前立腺癌は前立腺の中でも尿道より離れた外側の辺縁領域と呼ばれる部分から発生しやすい病気です。
 前立腺癌は、米国では男性の癌の中で死亡率が肺がんについで第2位、発生率が第1位となっています。わが国でも食生活の欧米化および高齢化社会に伴ってその発生頻度は急激に増加しており、泌尿器科領域においては最も多い癌です。
 最近では前立腺癌への関心が高まりから、人間ドックやがん検診でも前立腺癌の腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)を測定する機会が増え、経直腸的エコーガイド下前立腺針生検を受けて無症状のまま早期に発見されることが多くなっています。しかしながら進行して排尿困難、血尿や骨転移による腰痛、下肢のしびれなどの症状で発見されることもあります。
 治療法は手術療法、放射線療法、内分泌療法などがあり、全身への病気の広がりを調べてから、それぞれの患者様にあった方法を決めています。

(図2 男性生殖器)

精巣癌

 精巣の中の精子の元になる細胞が癌化したものが精巣癌です。精巣のしこりで発見される例がほとんどで、症状は全くないことが多く、あっても陰嚢の不快感や鈍痛程度です。多くの癌が高齢者に多いのに比べ、精巣癌は20才〜30才代に最も多く発生します。また、停留精巣の既往歴のある人には精巣癌の発生率が高いことがわかっています。精巣癌は抗癌剤が非常によく効く癌の一つです。ほとんどの癌では、見つかったときに転移があるとなかなか根治させることが難しくなりますが、精巣癌では適切な抗癌剤を使用することによって多くの場合、根治が可能です。

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