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事件
【産経抄】1月10日
2013.1.10 03:10
[産経抄]
「これは指導ですか。体罰ですか」。大阪市立桜宮高校の2年男子生徒(17)の通夜で、母親は、生徒が所属するバスケット部顧問の教諭(47)に詰め寄ったという。前日、自宅で自殺した生徒の遺体は、唇が切れ、ほおが腫れていた。教諭は「体罰」を認めて謝罪した。
▼指導と体罰の違いはどこにあるのだろう。バスケットボール部の部員を対象にしたアンケートによると、主将だった生徒に対する教諭の暴力は、自殺前日だけでなく、日常的に行われていたようだ。この全国大会「常連校」には、2年前にも体罰が横行している、との指摘があった。
▼にもかかわらず、市教委と校長によるおざなりの調査の結果、「ない」ことになっていた。生徒は学校の誰にも相談できない状況に追い込まれていたのかもしれない。密室のなかで繰り返され、SOSを出せないまま被害者が絶望を深めていくいじめ事件と、構造は同じではないか。
▼「泣き虫先生」の愛称で知られる山口良治・伏見工高ラグビー部総監督は、親の前で生徒を殴ったが、体罰とは思わなかった、と公言する。ともに汗を流し涙を流せる場を作り、アフターケアをしてきた、との自負があったからだ。
▼6年前の小欄で、京都府の公立小学校の男性教諭が、いじめをやめない30人の児童のほおを平手打ちにするという、「事件」を取り上げた。校長へ報告に行く教諭を子供たちは泣きながら追いかけ、保護者の多くも教諭を支持したそうだ。教諭の辞表が受理されることはなかった。
▼そんな「熱血先生」の情熱が、生かされる教育現場にするためにも、今回の事件の徹底解明が必要だ。「体罰禁止」のかけ声だけで、終わらせてはならない。
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