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お風呂で溺れる高齢者2012年02月16日
■冬場の入浴 急死の危険も 寒い日が続いています。こんな夜は熱いお風呂に入って体の芯まで温まってから布団にもぐりこみたいものです。 ところで、寒い時期、高齢者が入浴中に事故に遭うケースが頻発しています。全国で1年間に推定1万1千人の高齢者が、入浴中に急死する事故が起きているとの報告もあります。高齢ではありませんが、歌手のホイットニー・ヒューストンさんが入浴中に急死されたというニュースが世界を駆けめぐりました。 1年の中で、水に溺れて救命救急センターに運ばれてくる患者さんが多い季節は、水辺の事故が多い夏ではありません。寒い冬にご自宅の浴槽で溺れる方が、圧倒的に多いのです。しかも、70歳以上の方がほとんどです。お風呂につかっているうちに気を失ってしまうことが原因です。不思議と、夏にはこのような事故はほとんど発生しません。 なぜ、高齢者が入浴中に気を失ってしまうのでしょうか。それも冬場に集中して。 いくつか説があります。 (1)寒くて収縮していた末梢(まっ・しょう)血管がお風呂で急に温められて拡張し、調節能力が衰えている高齢者だと血圧が低下して気を失う(2)体の水分が比較的少ない高齢者は、長湯で脱水症状になり、動脈硬化を起こしている脳の血管が詰まって気を失う。 定説と言えるほどはっきりとしたものはありませんが、要は気温とお風呂の温度差に体が順応できずに気を失ってしまうようです。 じきに目を覚ますのですが、気を失っている間に浴槽に沈んでしまうと溺れ死んでしまいます。 予防策は気温とお湯の温度差を小さくすることです。(1)脱衣場や洗い場を入浴する前に暖めておく(2)昼間の暖かい時間帯に入浴する(3)湯船の温度を低めにする、といった工夫が重要です。長湯を避けることや、ちょっと長いと思ったらご家族が入浴中の様子をうかがうといった注意も必要です。酔っ払っての入浴なんて、もってのほかです。 自分の最期を想像すると、温かい湯船につかって「お〜、極楽、極楽」と言いながら寝入ってしまい、本当に極楽に行くのもいいかな、と思ったりします。亡くなられた方のご家族とは、そんな話をすることがあります。「長い患いの果てに逝かれる方もおられるのに、まだ元気なうちに大好きなお風呂につかって夢見心地のまま逝ったのはむしろ幸せだったかもしれない」。そんな話をされるご家族もいらっしゃいます。 ところで、下部温泉では毎月26日を「風呂の日」として色々なイベントが繰り広げられています。今月はギターとバイオリンのコンサートだそうです。無料入浴サービスもあるそうなので、暖かくしてお出掛けしてみてはいかがでしょうか。お〜、極楽、極楽。
マイタウン山梨
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