卓上四季
オリンピア
「近代オリンピックは、くさいものにふた式の休戦を要求する」と言ったのは、作家なだいなださんだ▼古代オリンピック競技は、分裂抗争する都市国家間につかの間の休戦を与えた。が、近代オリンピックはごたごたを覆い隠し、遠来の客には不愉快な思いをさせまいとする、と▼逆説的な意味で史上最も“成功”した五輪は1936年のベルリン大会だろう。人々は空前の大会規模に感激し、ドイツは健全で快適な国だと思い込んで去っていった。ヒトラー総統主催、ゲッペルス宣伝相演出の五輪は世界を欺いた。少数のへそ曲がりを除けば…(ダフ・ハート・デイヴィス著「ヒトラーへの聖火」東京書籍)▼人類の限界に挑戦する選手の躍動は素晴らしい。ロンドン大会のメダリストが、「日本の子どもたちに生の感動を」と語る気持ちも分かる。2020年夏季五輪の招致レースが本格化している。東京都は1964年以来の開催を目指す。石原前知事の悲願を継いだ猪瀬知事も力こぶを入れる▼さて、ライバル都市を下したとして、7年後を想像してみよう。震災被災地の生活再建は? 原発事故で家を追われた人たちは? 放射線を浴びての作業は? 炉心溶融した核燃料は?いくつもの「?」が残る。すべてを片付けた後、晴れ晴れとした気持ちで「平和の祭典」を祝いたい▼そう思うのは“へそ曲がり”だろうか。2013・1・9
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