大阪・高校生自殺 バレー部でも体罰「改善に努めなかった」
自殺した大阪市の公立高校の男子高校生(17)が、部活動で体罰を受けていた問題で、この高校では、別の顧問も以前、体罰で処分されていたことがわかった。被害に遭った生徒の母親が証言した。
自殺した高校2年の男子生徒が体罰を受けていたのは、大阪市立桜宮高校。
自殺した男子生徒のクラスメートは9日朝、「去年もことしも(2年間)同じクラスで、真面目で優しくて」と話した。
クラスメートが最後に会ったのは、生徒が自ら命を絶つ2日前の、2012年の終業式だったという。
男子生徒のクラスメートは「いつもと変わらない感じで。(何か悩んでいることは?)いや、わからなかったです」と話した。
別の桜宮高校の生徒は「すごく悲しかったです」と話した。
男子生徒は、全国大会の常連だったバスケットボール部でキャプテンを務めていた。
バスケットボール部の生徒は9日朝、取材に対し、「今は動揺していて、くわしくは語れません」とだけ答えてくれた。
桜宮高校校長は8日、「亡くなる前日には、練習試合をしていたようですけども、試合中に頬をたたくと。口のところを切っていたとか」と語った。
大阪市教育委員会は8日、「(厳しい指導や体罰が)つらいということ...。たたかれるという、そういう指導について、批判をしているといいますか、嫌だと」と語った。
繰り返される体罰に、SOSを発していたとみられる男子生徒。
学校側は、生徒が命を絶つまで、体罰の事実は把握していなかったとしているが、生徒が自殺したあとに、学校側がバスケットボール部に行ったアンケートでは、顧問教師がこの生徒へ体罰を行ったのを見たことがあるという生徒が、50人中38人いたことがわかった。
さらに、自分自身も体罰を受けたことがあると答えた生徒が、50人中21人にものぼった。
その体罰は、ビンタやたたくなどにとどまらず、けるという行為もあったと答えた生徒もいた。
大阪市教育委員会は、8日の会見で「通夜の席上で、お母様の方が、ご遺体を見てくださいということをおっしゃって、顧問が見ておりますので、その時に、腫れた傷が残っておったということで。『これは体罰じゃないのか』という問いかけに対して、『体罰です』というふうに、本人は答えています」と述べた。
体罰を行っていた、バスケットボール部の顧問教諭について、桜宮高校の生徒は「厳しい面はあると思いますけど、いい先生だと思います」と語った。
また、以前バスケットボール部に所属していた卒業生は、平手打ちなどの体罰はあったかという取材に対し、「自分の時から、そのような厳しい指導はあった」としながらも、「体罰ではなく、厳しい指導としてとらえていた」と答えた。
今回の自殺をめぐり、警察は、体罰の背景を明らかにするための捜査を行う予定だというが、その刑事責任を問うことはできるのかについて、元東京地検の若狭 勝弁護士は「目撃者がいるので、証拠としては、暴行罪には十分問えると思う。犯罪にならない体罰として行われたのか、あるいは、それを踏み越えて、犯罪としての暴行なのかという判断は、警察の限りでなく、検察庁とか裁判所の判断に委ねると」と語った。
そして、今回の事態では、桜宮高校と市の教育委員会による管理のあり方が、さらに問われている。
桜宮高校校長は9日朝、「行き過ぎた体罰であったんだろうと。そのへんの把握ができていなかったというのが。(校長の能力としてはいかがか?)それはもう、ひとえに、わたしの至らなさというか」と語った。
一方、橋下大阪市長は8日、「僕の把握している事実経緯からすれば、校長は(体罰を)知っていた、認識していたという、そういう報告も入っています」と述べた。
校長らは、本当に体罰を知らなかったのか。
2011年には、このバスケットボール部で体罰があったとする通報が学校に寄せられた。
そして、バスケットボール部以外にも体罰があった。
大阪市教育委員会は8日の会見で、「バレーボール部で体罰事案がありまして、これは新聞等で報道されましたけど」と語った。
桜宮高校の生徒は「(体罰とか見たり聞いたりは?)あ、ちょっとあります。バレー部のこととかです」と語った。
2009年12月から2011年3月までの間、桜宮高校のバレー部では、6人の生徒に、あわせて253回もの体罰を与えていたとして、顧問教諭が停職3カ月の処分を受けていた。
当時、体罰被害を受けていたというバレー部員の母親が、FNNの取材に応じた。
この母親は「(顧問が)倉庫に連れ込んで、何度もたたいたりというようなことが。子どもたちの中でも、『倉庫イン』という言葉があって、完全に日常化していた。バレー部の場合は、非常にむちゃくちゃな状態でしたので、何十発、年間何百発というところで、全く生徒は(顧問に)言えない状態でした。体罰というよりも、嫌がらせの1つの形であった。陰湿な教師側からのいじめ」と語った。
この母親によると、生徒たちが、たたかれた数を実際に記録していたことから、体罰が明らかになったのだという。
しかし、その後の状況について、この母親は「(子どもは)自分をOBとして、学校に足を踏み入れることもできない。(学校側は)その後も改善に努めなかった。その事件が本当に教訓になっていれば、今回のことは起きなかった。管理職、それから教育委員会は、何とかできたはず」と語った。
文部科学省のデータでは、全国の小中高校などで、毎年400人ほどの教職員が、体罰を理由に懲戒処分を受けているという。
「指導死親の会」の西尾裕美さんは、2001年に行き過ぎた教師の指導がきっかけで、息子が自殺したと訴えている。
西尾さんは「教師の指導とか、行き過ぎた言葉がけとかで、子どもが自殺することがあるんだよって。ひょっとしたら、この子が死ぬかもしれないという、教師にどこか危機感があれば、絶対、その言葉が変わってくる。たたくのもやっぱり変わってくる」と語った。
また西尾さんは、「体罰全てが、わたしは厳しい指導を全て否定するのではない。子どものためを思う言葉かけなり、方法であれば、息子は絶対死ぬことはなかったと、確信を持って思います」と語った。
問われる教育現場での指導のあり方。
桜宮高校では9日夜、保護者会を行い、あらためて説明する予定。